「むしろ戦場以外で、繊細な内面を巧みに表現」ハクソー・リッジ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
むしろ戦場以外で、繊細な内面を巧みに表現
メル・ギブソンが久々にメガホンを取り、アンドリュー・ガーフィールドがオスカー候補に。ともに表舞台から消えたように見えましたが、しっかり復活したんですね。
冒頭、負傷したドスに「お前を助けるからな」と声をかける兵士がメル・ギブソンに見えた気がして、カメオ出演か?と思いましたが、メルの息子のミロ・ギブソンが出演しているということなので、彼なんじゃないかと。一瞬だったので確証はありませんが。
「プライベート・ライアン」を超える戦闘シーンだとか、R15指定になった過激な殺戮シーンが注目されているようですが、正直言って期待を超えるものではありませんでした。多少なりとも、刺激を求めていた自分が恥ずかしくもあり、「そんな映画じゃなかったんだ」と思った次第です。
良くも悪くも、この映画はデズモンド・ドスの成し遂げた英雄的行動をフィーチャーしたもので、沖縄戦の悲劇とか、戦争のむごたらしさに焦点を当てたものではなかったようです。武器を持たずに戦場にいるということが、どれほど過酷なことかを強調するためには、すぐそばを砲弾がかすめ、死体が転がる白兵戦の迫力がリアルであればあるほどいいのでしょう。
過去の監督作「アポカリプト」や「パッション」には、目をそむけたくなる暴力シーンがありましたが、今作では、むしろおとなしめの描写に意識して抑えたんじゃないかと思います。
映画自体がやや長すぎることと、登場人物が多すぎて負傷した味方の区別が付きにくいことが残念な点です。例えば、奥さんとの恋愛シーンをもう少しサイズダウンして、その分戦場での味方との交流を濃密に描いて欲しかった。
とにかく、負傷した兵士を担いで戦場を駆け抜けるアンドリュー・ガーフィールドの姿に、胸が熱くなり、こみ上げてくるものがありました。「フューリー」なんかが好きな人にはおすすめです。
2017.6.26