「視点はアメリカ寄り」ハクソー・リッジ penguinさんの映画レビュー(感想・評価)
視点はアメリカ寄り
後半の銃撃戦が「プライベートライアン」を引き合いにされるというのはよくわかる。生々しさと迫力が通常の戦争映画より何倍もすごい。現場にいるような臨場感。テレビ放映で見たけど、劇場だったら身動きできなかったと思う。前半が長すぎる、というレビューもあったが、逆に後半が長すぎたら観客にあのインパクトを与え続けるのが難しくなったと思う。前半のやや冗長に感じる部分が後半の緊張感を与える結果につながったと感じる。
日本兵の描き方はまだまし、という評価もあるが、視点はアメリカサイド、というよりキリスト教徒サイド?映画の中の会話に出てくる「敵はキリスト教徒ではない」。キリスト教徒でない奴は殺してよい。これは十字軍の時代からずっと同じ理屈。だからアメリカ新大陸に上陸したときも原住民を殺してよい理由となった。
公平性という面ではクリント・イーストウッドの「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」のほうが双方からの視点を描いていてイーストウッドのほうに軍配が上がる。
それでも感動するのは主人公がアメリカ軍がいったん撤退をすることになり、主人公が迷う場面。ここが最大の見せ場。どう考えても戻れば地獄なのはわかっている。でもそこで戻る主人公。そこからがすごすぎる。前半で主人公をいじめた上司が救出された後、主人公に言う言葉「やせっぽちの変な奴」(そんな表現だったと思う)、つまり屈強でもない、その主人公が75人(!!)もの命を救うなんて、実話でなかったらとてもじゃないけど、信じられない(でも、実話!最後に本人のビデオが登場)。やせっぽちでもスタミナがあったんだね。あの崖をどうやって降ろすのかと思ったけど、あのロープの訓練が役に立つところがおもしろい。
ちなみにほかのレビューであの崖のネットを日本兵が切ってしまえばどうなった?って言ってた人がいるけど、またアメリカ軍がかけ直すだけでしょ。