「なぜ銃を持てない人間が軍に居られたのか?」ハクソー・リッジ John Titorさんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ銃を持てない人間が軍に居られたのか?
事実に勝るフィクションはない
75人もの負傷兵を救った衛生兵の存在、それも良心的兵役拒否者(厳密には違う 以下C.O[Conscientious Objector]と略す)がというストーリーは真実であるからこそ心に重くのしかかる
しかしながら名誉勲章を授与された方に対して大変失礼ではあるが、映画内での演出はそ伝説がかえってフィクションに感じさせてしまった
私が心を打たれたのは寧ろ「武器を持てない人間がなぜ軍隊に入れたのか?」という過程である
WW1に従軍し戦後はPTSDに苦しんだ父親という存在が主人公との対比として巧みに描かれている
入隊後「武器を持たない」というドスの信念は予想通り受け入れられず、"フルメタルジャケット"並みの洗礼を受けた
それでもドスは挫けない
彼の愛国心がC.Oという異質な自身を保ち続けていた
そして、その「愛国心」こそが本作のキーだった
我が国では愛国心は戦争に駆り立てる道具として用いられたが、本作では「愛国心」≠国家の消費財
=アメリカの価値観を守ること
として明確に定義されていた
そしてアメリカの価値観とは「自由」
--多様な考えや宗教の存在を守る 多様性を尊重する--
この国民的価値観が根底としてあり、尚且つ合衆国憲法でそれが保障されていたからこそデズモンド・T・ドスという存在が成立したと思い知らされた
物語のハイライトだと感じた軍法会議のシーンにおいて私はドスの父親の台詞に激しく胸を打たれた
確かに彼は戦争の消費材のような存在であったかもしれない、しかし決して彼は軍のために戦ったのではない
彼はアメリカの価値観を守るために戦った守護者なのだ
その軍服姿は本来のアイデンティティを取り戻したように映り、だからこそ規律厳しい軍組織に対してあそこまで物申すことができ、そして彼の独白は真の愛国者としてただただ美しかった
戦争映画であるが現在にも通じる「我々は何を守っているのか?」を問いかけた作品だった