「メル・ギブソンの執念が成し遂げた、誰も観たことのない種類の戦争映画」ハクソー・リッジ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
メル・ギブソンの執念が成し遂げた、誰も観たことのない種類の戦争映画
メル・ギブソンの執念を見た。溜まっていたものを全てぶちまけるように、観る側が恐れおののくほどの圧倒的な戦場を描き尽くしている。確かに激戦地で銃弾が、肉片が飛び散る様には凄まじいものを感じた。が、秀逸なのは「人命を奪い合うこと」以上に「人命を助けること」をここまでの壮絶さで描き切った点だろう。奇しくもガーフィールドがロープを駆使して崖から負傷者を下ろす様には『アメイジング・スパイダーマン』、あるいは信仰に生きる『沈黙』の役柄すら彷彿させられた。
また、本作は主人公の半生についてドラマを重ね、彼が「絶対に武器を手にしない」という信念を貫く根拠をじっくりと醸成していく。そこで絡まり合う父親像の素晴らしさをどう表現すれば良いのだろう。ギブソンは弱い者、傷ついた者にどこか優しい。彼自身、人間の底にある弱さを自覚しているからこそ、再起しようとする者にかくも特別な見せ場を用意せずにいられなかったのかもしれない。
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