「宗教云々を超えた感動」ハクソー・リッジ ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)
宗教云々を超えた感動
戦場において「宗教上の理由から」武器を持たず負傷兵の救助のみ行う主人公デズモンドは確かに狂信的だ。しかし宗教観の是非は別にして「人を助けること」の正しさは誰も否定できないはず。俺はその行動に宗教なんかを超えた極めて人間的な感動を覚えた。事実は小説より奇なり!
『ハクソー・リッジ』は『沈黙』と表裏一体。「暴力的で不条理な現実を前にして自らの信念を守り抜けるか」というテーマと主演アンドリュー・ガーフィールドで繋がる。前者は信念を守り抜いた者の物語で後者は信念を挫かれた者達の物語
イエスの立ち位置も違う。『ハクソー・リッジ』では天上の人(物語上のラストカット。デズモンドが天国に召されるような「最後の審判」を思わせるイメージからも明らか)なのに対して『沈黙』では地面に置かれた踏み絵とオーバーラップして「踏むが良い」と語りかける同伴者たるイエス
個人的には『沈黙』の方を大事にしていきたい。大事にするの意味がわからんけど
しかしメル・ギブソンは人間としてはヤバいけど映画監督としては一流。前半のセットアップが丁寧かつ軽快で面白いしそれが後半の戦場描写でキいてくる。「感情移入させてから殺す」は優れた戦争映画の鉄則。一番びっくりしたのは戦いの火蓋が切られる瞬間!ウワーッ!
脇を固める役者陣もよかった。特にヒューゴ・ウィーヴィング。アル中でDVもするとか完全にメル・ギブソンが自己投影しているとしか思えない役柄なんやけどこの人のある行動にもまためちゃくちゃ感動した。サム・ワーシントンもいつになく渋かったしヴィンス・ヴォーンのノンキャリア感もドンピシャだった
ラストの本人インタビュー映像も最適な尺だった。改めて『パトリオット・デイ』のそれは常軌を逸していたと思う