「終わり無き壮絶アクション!の足を引っ張る滑稽展開」亜人 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
終わり無き壮絶アクション!の足を引っ張る滑稽展開
原作コミック未読。
監督が本広克行と知って若干躊躇したものの
(氏の映画はあんまし肌に合わなくてですね)、
邦画でド派手なVFXアクションやったるぜ!的な作品は
どんな出来じゃろかいと観たくなってしまう。
佐藤健も綾野剛もアクションイケる役者さんだし
エンタメアクション作として期待できるかも、と鑑賞。
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で、この点は嬉しいことにかなりの出来!
決して死なない“亜人”という設定を存分に活かした
戦闘シーンはスピーディかつ豪快でヒネリも利いている。
亜人は刺されても撃たれても手足失っても全身粉砕されても
一度死ねば肉体全てが修復(リセット)される。
おまけに亜人粒子なるもので形成したスタン……
ゴホン、幽霊のような分身を闘わせることも可能。
対する一般人は麻酔や拘束具で動きを封じるしか手が無いが、
亜人は不利になるやいなや自分で頭を撃ち抜きリセット!
頸動脈切ってリセット! 飛び降りてリセット!
攻める場合もムチャクチャだ。
自分の体の一部を囮に使ったり、乗り物で突っ込んだり、
文字通りの捨て身の攻撃を躊躇なく仕掛けてくる。
(さすがに9.11のアレは色々マズい気がするけど)
クライマックスを飾る亜人&幽霊タッグマッチも見事で、
アクションもアイデアも満載で楽しく、邦画の
VFXアクションの進化をしっかり感じ取れる出来だった。
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立役者はやはり主演の佐藤健と綾野剛。
綾野剛は拳銃からマシンガンまで凄まじい銃捌きで魅せるし、
佐藤健の跳躍・疾走等の肉体派アクションはビシッと華麗。
おまけに2人とも細いのにスゲぇ筋肉! エンドロールの
ライザップか? ライザップ仕込みなのか?
綾野剛演じる佐藤(ややこしい)の悪役っぷりも
痛快で、「なァつかしいねェ田中くゥん」とか
「やッ! 来ちゃった!(照)」とか、
妙に爽やかダンディな言動がやたら面白かった。
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なのでアクション面と主演については満足。
なのだけど。
それを-方向に補って余りあるツッコミ所満載の描写が問題。
妹の病気をもっとテーマに絡めた方が……とか、
下村ってなんであんなに戸崎に従順なの?とか、
単純に物語上での描写不足に関する不満もあるが、
それより遥かに困りものなのは、
アクションや映像のド派手さに反して、登場人物の
行動が所々で笑ってしまうほどチープである点。
主人公2人が対立する序盤の流れから
「展開が粗いな」と感じ始めてはいたが、
佐藤がマスコミを利用して世論を味方に付けようとする
シーンではいよいよ吹き出しそうになってしまった。
カメラの前で涙を流すまでは問題ないよ。
けどあそこでニヤリとしちゃいかんですよ。
カメラまだ回ってますよ。涙流す演技はできて、
どうしてそこで笑うのは我慢できないの、もう。
その他、心の中で呟いたツッコミのごく一部を羅列。
・研究員さん、階段で逃げるタイミングもう少し考えて
・いくら親切でもこんな馴れ馴れしいお婆さんいるかしら
・複数の亜人が厚労省を狙ってると分かってたのに
外部からの狙撃にあたふたする特殊部隊……
・部屋に閉じ込めるなら麻酔 or 催涙ガスとかでも……
・なんで社長室に致死性の毒ガスなんか置くの?
・なんで社長あんなにアホなの?
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あと、演技面。
主演2人は良い。城田優、玉山鉄二、浜辺美波
なども良い。しかし全体として、サブキャラや
モブキャラになるほど演技がクサくなる傾向。
川栄季奈、千葉雄大の演技は酷いし、エキストラ
の演技はもっと酷いが、まだ我慢できる。だが……
ああと……誰だっけ、名前も覚えてない亜人の手下2人。
「ヒャッハー!」とか「センソウヲハジメルゼー!」とか、
大袈裟・五月蝿い・台詞ウザい。コイツらだけ
大事なクライマックスなのに安さハンパ無い。
一体どうしたというのか。この二人だけ『北斗の拳』の
世紀末モヒカン役のオファーだと思い込んでいたのか。
フォージ重工社長。貴方もですよ。
『水戸黄門』の悪代官じゃないですからね。
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アクションの出来はかなりのものだし
楽しんで観られたのだけど、やっぱり
「これだけ物凄いアクションなのに、展開
やキャラ描写がこの出来では勿体ない」
という残念な気持ちの方が自分の中では強いか。
まあまあの3.0判定で。
<2017.9.30鑑賞>
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余談1:
「これで25体も殺したよ田中くゥん」て、
いやスーパーマリオってそういうゲーム
じゃないから。クリボー可哀想だから。
余談2:
謎のヒカキン推しは何だったんだ。
文章力凄いですね。俺なんかまるで敵いません。
観てる映画は被るのに評価は大分違ったりしてたので、なかなかコメントしづらかったんですが、この作品に関しては同評価です(笑)