「評価に違和感を感じます」亜人 ナブラさんの映画レビュー(感想・評価)
評価に違和感を感じます
観賞してきましたが、主演陣のアクション(戸崎以外)と菅野祐悟さんのBGM(一部)しか評価できる点がなかったです。
本広監督は組むスタッフによって作品の出来にムラがある監督だなぁと再確認しました。
まず、いい点から
一つ目アクション。まー佐藤健と綾野剛はるろ剣でもわかる通り、期待通りの完成度の高いアクションを披露してくれました。鍛えられた肉体美もキッチリ努力が感じられ、素晴らしいと思います。
あと、今作のMVPは個人的にはAKB川栄です。
めちゃイケの女子プロの時も感じましたが、アクションの才能は女優ではトップクラスだと今作で確認できました。youtubeにも宣伝映像でアクションを披露していますが、特に、「飛びつき腕十字」みたいな総合格闘技系の技がとても綺麗です。この手の技は女優がやると大体相手に受けてもらってる感がすごくて興ざめなパターンが多いのですが、今回のアクションを通して川栄が「和製スカヨハ」なんて呼ばれる日も近いのかなと感じました。まー若干本物に比べ、色気が足りませんが笑
二つ目音楽。安定の菅野祐悟。戦闘曲は疾走感があって最高です。アクションはミュージカルと実は作り方が似ているなんて言われているらしいですが、ハリウッドのアクション映画も音楽には拘ってる作品が多いです。
以上、2点からアクション映画として成功する下地はこの作品にあったなと思うのですが…
んじゃ、悪い点。
まず、アクション。これはテンポが悪い。あとアクションの合間に一々ドラマパートを挟むので本当にテンポが悪く、俳優の動きのキレと疾走感のあるBGMを殺してしまっていますね。。今作はアクション全振り作品とも言われてますが、アクションの完成度の高さで言ったら、つい最近、最終回を迎えた桐山漣主演の民放ドラマの方が高いです。(具体名は出しませんが笑)
一番の売りなんだから、ここはもう少しスタッフに研究してもらいたかったところです。(アクション班ではなく、編集だったり、演出スタッフのことを言ってます)
あと、脚本。
テンポがいいと評判ですが、冗長なドラマパートが多く、観賞中、10回くらい時計観ました。あと脇役のキャスティングが下手だし、演技もすごく鼻に付きました。あとセリフや展開とにかく不自然。
そもそも亜人研究施設襲撃からマスコミの到着早すぎだろとか、生中継で急にコメントでしかもそのまま報道っておかしく無い?報道管制とかテレビ局にも厚生省から圧力かかるだろ?とかあと、亜人関連のニュースのコメンテーターの台詞とか。
こういうとこ引っかかる人は少ないかも知れないですけど、少なくともアニメ版はこの手の辻褄は合わせてくれてました。(原作は若干甘いけど笑)
尺が無いからってのもわかるんですけど、だったら切れるとこ結構あっただろって感じなんですよね〜
(これは結構指摘あったけど、ヒカキンとか、田舎の婆さんの件とか)
それでいて佐藤の転送の件はあっさり終わらせちゃってるところがガッカリです。あれは腕だけ送って転送するっていうトリックと同時に自意識の分裂というリスクも厭わない佐藤の狂気を表すシーンでもあったのにそういう原作の面白いところを切り捨ててるのが、本当に残念です。
そもそも、原作は永井ケイと佐藤という2人のサイコ野郎の対比が面白さの醍醐味なのにそこは切り捨てられています。というか切り捨てきれてもいない。映画化にあたってケイの冷血サイコな部分は恐らく描かれないだろうと、予想していたのですが、妹の「お兄ちゃんは冷たい」という台詞だけ残ってどこが冷血なのかという説明はされないし、佐藤のサイコな部分も快楽殺人的な部分だけ残されていて佐藤の過去の設定も少し変わっています。
おそらく、冷血だったケイが戸崎チームのおじさんの死をキッカケに少し成長するみたいな演出をしたかったのでしょうが、だったら何故、ケイは冷血なのかというエピソードと戸崎チームの訓練シーンがないのか?それは最低でも入れなきゃ何のカタルシスもないでしょ?
全体的にペース配分が下手です。今作は。
あと、佐藤健と川栄のアクションシーンなんですが、なんであんなに頑なにリセットしないんでしょうか?撃たれたり刺されたりして痛いならリセットすればいいのに無駄に苦しみながら頑張ってます。主人公側に感情移入させたいのはわかりますが、マジで20回くらい心でツッコんでました。
総括すると、主演陣と音楽は素晴らしいのに、その他で上手くいかなかったなーという作品でした。