劇場公開日 2017年9月30日

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「亜人が人類の脅威ならば、亜人の敵は…」亜人 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5亜人が人類の脅威ならば、亜人の敵は…

2017年10月2日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

興奮

今年は月に一本は公開されるほど漫画の実写化続くが、その中でちょいと興味を持ったのが、本作。
原作漫画やアニメを見ている訳でもなく、ただ単に話が面白そうだな、と。

死なない新人類“亜人”。
例え身体を負傷しても、命を絶てばリセット。
その存在が世界中で確認され…。
和製『X-MEN』のような設定。

交通事故で死んだ直後生き返り、自分が“亜人”であると知った研修医の永井。
国家に身柄を保護される…いや、人類の進化の為の研究という大義名分で、非人道的な人体実験を繰り返される。
“亜人”とは言え、苦痛は感じる。
特殊な存在は研究の為のモルモット、自分たちと違うから迫害の対象。
確かに人類の脅威になるかもしれない。しかしそれはあくまで、牙を向けば、だ。
牙を向けさせたのは、国家や普通の人間たちの冷酷な仕打ち。

亜人のテロリスト、佐藤の言い分も分からない訳でもない。
国家は嘘を付き、“普通の人間”ではないからと言って苦しめ続ける。
我々は化け物じゃない。同じ命ある“人間”だ!
激しい憎悪や復讐心を植え付けたのは、むしろ…
しかし、佐藤がやってる事はただの狂気の殺戮。
まるでクリボーを踏み潰すゲームのように無情に人を殺し、それは自分が激しく憎む亜人を人と思わない国家とやってる事は同じ。

そんな佐藤と永井は戦う。
永井も国家が自分にした仕打ちを決して忘れはしない。
なのに…
いちいち言う必要も無い。
“人”としてあるべき行動。

スピーディーな展開、ハードなアクション、ドラマもコンパクトにまとめた本広克行監督の手腕は邦画SFアクションとして上々。
佐藤健を始め体格差のある城田優と川栄李奈らキャストたちの体を張ったアクション。
佐藤役の綾野剛は飄々としていて不敵で、存在感を発揮する。あの“転送”には舌を巻いた。
ユニークなのはスタンド…じゃなくて、亜人の“幽霊”。
この“幽霊”を交えた亜人同士のバトルがなかなか魅せるアクションの画になっており、また永井と“幽霊”のやり取りが笑いをも誘う。
“幽霊”の声をアニメ版の永井の声を担当している宮野真守なのもファンには嬉しい所。
巨匠監督のゲスト出演やSATのアノ人は『踊る』繋がり。

まあでも、難点や粗も結構目立つ。
まず、展開。スピーディーで飽きさせはしないが、ちょいと早過ぎ。
だからと言って話に入っていけないって訳ではないが、永井のバックボーンなどもうちょっと語っても良かったんじゃないかな。ダラダラやるよりかはいいけど。
逃亡した永井を匿ってくれる田舎の老婆は典型的って言うか、如何にも邦画っぽい。
永井は日本中に顔を知られてるのに楽々と妹が入院している病院に現れ、そして楽々と妹を病院から連れ出したり。
一介の研修医に過ぎない永井が何故かクライマックスで佐藤と戦う作戦に長け、“幽霊”についても説明不足。
…などなど。
ドラマ部分も見応えはあるが、アクションやビジュアルに比重を傾け過ぎたか。

トータル的に思ってたより面白かった。続編も作れそう。
出来の悪さに“唖然”とするレビューにならずに済んだ。…なんてね。

近大