「主観VS想像力」光(河瀬直美監督) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
主観VS想像力
テレビドラマの副音声で音声ガイドは聴いたことがあるが、単純に脚本のト書きを読めばいいものだと思ってたのに、単純なものじゃなく、大変なことがわかった。聴覚効果に関しても優れていたけれど、その点は『殯の森』(2007)にも通ずるものがあった。映像もいつもの河瀨作品とは違い、クローズアップにより頭の部分がフレームアウトしてる画が多かったように感じる。
劇中劇でも妻の認知症を看る藤竜也の姿、ストーリーでも水崎綾女演ずる美佐子の母親が認知症で徘徊するまでを描いていて、視力を無くしつつある視覚障がい者の感ずる“光”と認知症患者と介護する者の感ずる“光”を比較していた。このコントラストに同じ微かな希望をも感じ取ることができたが、同時に「消えつつあるものが美しい」と、悲哀に満ちた愛ともとらえることができた。
主観による説明では観客は誘導されるが、想像させることで映画の世界が広がっていく。難しい作品ほど観客の感性により受け取り方が違うのは健常者にとっても同じこと。このサイトのレビューを読んでるだけでも楽しいものだ。と、つくづく思う。
好きなシーンとしては、夕陽のシーンはもちろんのこと、美佐子が母親の横で添い寝して息をしてるかどうかを確かめるシーンが強烈だ。母親の消え去ってしまった美しいものは戻ってくるのだろうか。認知症が増え続ける世の中、患者の気持ちに立つことは難しいが、想像力で補えば愛情は必ず伝わることだろう。
水崎綾女がそのままナレーターするのかと思っていたら、樹木希林だったことに驚いた。自宅鑑賞しかもヘッドホンにてでしたが、やっぱり心地いいわ。
希林さんだったのですか。
知りませんでした。
そこもまた監督のアイデアなのですよね?
河瀬監督初体験ですが、淡々とした雰囲気の中で、激情を表現する腕前に凄味さえ感じました。