「真ん中よりも後ろの席で観て欲しい」光(河瀬直美監督) だいきつさんの映画レビュー(感想・評価)
真ん中よりも後ろの席で観て欲しい
「萌の朱雀」で魅了されてから
河瀬直美の作品は定期的に観ている。
娯楽色が薄い作風なので
気軽に友人に勧めたりも出来ない。
前作の「あん」もそう。
派手さはないけれど
あんなに余韻を楽しめた映画は
なかなかないと思った。
劇場の薄暗い照明の中とはいえ
恥ずかしいくらい号泣したのを
覚えている。
なのでどうしても
前作と比べてしまうのだか
前作を超えられたかというと
難したかったかな。
前作「あん」では
樹木希林の神がかった
演技に魅了された。
今作ではその役を
永瀬正敏に期待した。
期待しすぎたかもしれない。
そのぶん水崎綾女は
期待以上の女優さんだった。
いつもながらの河瀬直美の
演技を感じさせないセリフ周り。
この空気感が好きで
見に来たんだなと再認識。
音声ガイドをみんなで
話し合いながら決めて行くシーンは
ホントにドキュメンタリー番組の
ワンシーンを見ているかのよう。
その中での水崎綾女。
自分の仕事の力量の無さを
指摘され悔しさで涙するシーン。
まるで自分がその会議に
参加しているかの錯覚を起こすくらい。
それほどリアルで生々しく
これぞ河瀬直美という感じだった。
かなり人物に寄ったアングルの
画面構成に賛否あるよう。
私も序盤はとても見辛かった(^^;;
張り切って前の方の席を
キープしたもんだから尚更のこと(^^;;
物語が進んで行くうちに
これが中森の見ている世界?
なのかもと思った。
これから見る方には
真ん中よりも少し後ろの席を
お勧めします(^^;;
さすが河瀬直美!
という作品だった。
だからこそ!
あそこでのキスシーンは
本当に必要だった?との思いが残る。
しかも貪るようなキスシーン。
せめてたどたどしく触れ合うくらいの
キスシーンなら...。
けれど観て欲しい映画。
今まで知らなかった世界が覗ける。
河瀬直美初心者なら
前作「あん」を観てから
劇場に行って欲しい。