「永瀬正敏の光を失った目」光(河瀬直美監督) 月野沙漠さんの映画レビュー(感想・評価)
永瀬正敏の光を失った目
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視力を失った有名カメラマン中森と視覚障害者向けに映画の音声解説の文を作る女性、尾崎美佐子の出会いの話。全体的に暗くて重い。中森の作った解説文を、実際の視覚障害者の意見を聞いて改善していく作業を軸に話が進む。他の視覚障害者が美佐子に気を使って当たり障りの無い意見を言う中で、中森はズカズカと忌憚ない意見をぶつける。その意見は美紗子の視覚障害者の想像力を理解出来ていないことからのものだったが、美紗子は反発する。中森は中森で視力を失ってもまだカメラにこだわり、心が頑なになっている。そんな頑なな中森の意見を素直に受け容れられず、反発する美佐子の未熟さが痛々しかった。
他のエキストラさんらしい視覚障害者のモニターの方々も個性的でリアルだった。特に場の雰囲気を和ませようとする中年の女性。喋る時、微かに口の端に泡を作るのだけど、障害ゆえに周りの反応を見て気にするということが出来ないんだろうなと想像出来て、本当の視覚障害者ならではの演技だった。またこの女性、場を和ませるだけではなく、結構鋭い意見も言ったりして侮れない所も良かった。
中森と美佐子が交流を経て、中森はカメラへの拘りや頑な心を和らげ、美沙子は自分の未熟さを受け入れ視覚障害者への偏見を見直し、中森という人間も理解していく。まわりくどくも感じるところもあったけど、丁寧に描いていると思う。
永瀬正敏の演技が良かった。ちょっと近寄り難い影を持つ中年男の演技ならこの人、という存在になった^^
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