「透明」光(河瀬直美監督) U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
透明
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不思議な透明感を持った作品だと感じた。
考えてみれば、闇も透明も「見えない」って事で括ったら同じようなもんだ。
何から感じ取ったのかは分からんが、静寂とか整然とか…静かな水面を想像してた。
主人公の分かりやすい成長を主軸に据えているとはいえ、それを取り巻くものが一癖も二癖もあるモノばかりで…人の内面の複雑怪奇なシンプルさに気づき、そして、それを選択した監督に畏怖の念さえ抱く。
映画の音声ガイドなんて職業をよくぞ選んだものだと思うが、直接的に関わり第三者的に距離をおくにはもってこいのポジションだ。
作品毎にご自身が監督として関わっておられるのかもしれないが、健常者からすれば頭にも過らない。
永瀬さんの視界がゼロになった時にドキっとした。
このまま映像が更新されていかないのではないかという懸念が頭を過ぎり、視覚障害者の世界に一歩、いや半歩、足を踏み入れたような気になった。
恐ろしい。
作中にある言葉通り、僕はこの映画を通して、盲目の方が生きる世界に少し関われた。
そして、その世界に全く色がないわけではないという事も感じられたように思う。
目で観るのとは別の認識が出来る色があるのではないのだろうかと思う。
そして、最後に盲目のカメラマンは叫ぶ。
「そこに辿り着くから、待っててくれ」
と。
同情からの善意…それだって善意なわけだが、そうではなく、並び立つ個としての理解を求められたようであった。
意欲作であった。
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