劇場公開日 2017年4月7日

  • 予告編を見る

「作品の根っこを改変してるので、これは別物」ゴースト・イン・ザ・シェル ビン棒さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5作品の根っこを改変してるので、これは別物

2024年5月19日
PCから投稿

日本でのアニメの完成度が高かったので、全く見る気は無かったのだが、
酷評されていたので、怖いもの見たさに時間潰しで視聴。

やはり酷かった。
冒頭シーンは 元ネタのアニメのシーンを大きくパクっている。
もしこれが リスペクトの結果なら、設定や内容を大きく改変したりしないだろう。
イメージだけパクって、あとは適当に変えようというノリにしか思えない。
これはオマージュではない。
一番酷いのは、本映画の「ゴースト」が元の作品と意味する物が違う点。

他の改変箇所も不快
・北野武が演じた荒巻は、頭が切れる正義感だが、官僚としても優秀で
 冷静な判断ができる人物。政治的な駆け引きが 彼の重要な役割。
 無駄に怒鳴ったり、椅子にふんぞり返って精神論の上司命令などしないし、
 ましてや戦闘などの「荒事」は絶対しない。

・義体がロボコップのように、ボディに脳を接続するだけで機能する。
 元の設定の、義手や義足の延長という概念がなく、単なる兵器扱い。
 製造するHANKA社が素子を利用する設定も ロボコップに酷似。
 しかし、どう利用するのか全く説明がない。
 この会社が、犯罪的な人体実験で多くの犠牲を出したと「悪」という
 脳筋ハリウッドらしい単純な設定。
 しかもその貴重な技術を持つはずの科学者を、簡単に殺す無計画さ。
 おそらく、この辺りの辻褄は何も考えていないんだろう。

・HANKA社の社名がイメージするのは中国系。
 (hannkaで画像検索すると基板の写真が多数ヒットするので、
  英語や日本語の派生名称ではない。)最近の映画はスポンサーが中華系
 が多いらしいので、これもそういう背景なのだろう。
 しかし原作の設定では中国は日本にとって反対勢力なので、日本が舞台
 である以上、基幹技術を反対勢力に押さえられた状態であるはずはない。
 全ての義体にバックドアを仕掛けられた時点で、勝負が決してしまう。
 ここは、中国風の名称を使ってはいけない箇所。

・奇抜過ぎるメイク
 接待役の芸者型ロボットの奇抜なメイク(中でも赤白の丸は典型)
 あのメイクに日本への侮蔑が入っているような気がする。
 製作者がああいう格好の女性が好みであるなら話は別だが…。
 (ヤマンバメイクもあるので、奇抜なメイクが無かったとは言わない)
 個人の感想だが あんな所に招待されたら接待でなく拷問に近い。

・チームの有り様がまさにアメリカ映画。
 喧嘩っ早い女性隊員、皆性格が幼稚でチームはバラバラだし、
 役割をきちんとこなすスマートさに欠ける。力業が多すぎる。

挙げればキリがない。
これだけ原作を改変するのなら、オリジナルのサイバーパンク物の方が
良かっただろうに。

原作とは全くの別物として観たらどうかというと、米国人が好きそうな
力業のアクション映画。ストーリーはよくあるパターン。
多少金を掛けた映像以外は特筆すべきものは無いが、最悪でもない。

ビン棒