「誰も幸せになれない物語」光(大森立嗣監督) mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
誰も幸せになれない物語
日本映画専門チャンネルの「月イチ衝撃作」にて観賞しました。
誰も幸せになれない辛すぎる物語で、観賞後は闇の世界にどっぷり浸かりそうな気持ちになり、観ている間は、妙に心がざわざわしてしまいました。
ストーリーも前評判も原作者のことも何も知らないまま、ただ、「光」というタイトルのみが気になって観たので、最後の最後まで「光はどこに出てくるのか?」と思いながら突き進んでいきましたが、最後まで一筋の光も見えませんでした。
光がなんであったのかは、よくわかりませんでしたが、途中、岡本太郎のモニュメントや絵画が出てきて、びっくり。芸術的な意味合いからすると、生命力にほかならないのでしょうが、信之を突き動かす「モノ」が生命力だったのか??
もつれた愛の屈折した感情が人との関係性の間で悲劇を生んだ物語かもしれません。もはや、愛なのか執着なのか、しがみつきなのかわかりませんが、誰にも感情移入できない中、信之に殺されることを幸せに思いながら死んでいった輔の姿が哀れでした。
井浦新、瑛太、好演でした。橋本マナミも難しい役どころをそれなりにこなしていたいような気がします。長谷川京子は、とってつけたような悪女みたいで、いまいち。文芸映画の質を落としていたように思えました。常盤貴子のような内に悪を秘めた感じを出せる人の方がよかったかも。
虐待やら殺人やらの事件がなくならない世の中、自分には無縁の世界だと思ってしまいますが、それらの事件の背景には、愛がうごめく歪んだ人間関係の中で突き進んでいく悲劇があるのかも、とも思ってしまいました。
※邦画にはありがちですが、かなり台詞の聞きづらい映画でした。途中から、字幕補助にて観賞しました。台詞を聞き取りたいために音声を大きくすると、いきなりの不協和音のようなBGMに吹き飛ばされそうになりますので要注意。