「島から抜け出せない大人達」光(大森立嗣監督) KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
島から抜け出せない大人達
故郷の島の人間と出来事にガチガチに絡められ、抜け出せない大人達がただただ飲まれて沈んでいく様子をただただ観ているしかない。
起きて欲しくないことが次々起こってひたすらに暗いストーリーはかなり好き。
虐待、強かん、殺人、震災と容赦ない暴力が小さな島と子供達に降りかかっていくのが痛い。
でもそれに諦めたように、大きく苦しみもがくことをあまりしない3人に不自然さを覚える。
この映画で一番悲しいのは輔だと私は思った。
頭のネジ何本も飛んだような笑い方や咆哮をあげる彼に、親から暴力を受けながらも秘密を秘密として守りユキ兄に引っ付く子供の顔が重なって辛くなる。
20年以上経っても歪んだ執着をして心の拠り所にして、それでも愛されず笑いながら死を受ける姿があまりにも残酷だと思った。
大人になっても父親に怯え言いなりになってしまうのがリアル。
信之と美花に関しては本心があまり見えて来なかった。
殺害現場の写真ならまだしも、ただの死体の写真が自分たちの罪を大きく証明するものとはどうしても思えず、その反応が過剰に思えた。
信之の重すぎる愛情にも少し疑問。
まあ中学生の頃の強烈すぎる体験からと思ってしまえば良いんだけども。
あの時の体験から抜け出さないことを敢えて選んでいるような行動を取るのがまた面白い。
演出面が特徴的だった。
所々で印象的で強い画が挟まれ、爆音エレクトロBGMが鳴り響くのでちょっと集中力削がれるしだいぶキツかった。
ストーリー自体に不快な要素が多いけどその演出でさらに不快さを増してくる。
これでもかってくらい気持ち悪く感じさせるのは良いと思うけど、さすがにテンポが悪く思えたのが残念。
最後狂ったように「パパパパパパパパ!!」とはしゃぐ椿がどうしようもなく気持ち悪かった。