「血の子午線」トマホーク ガンマンvs食人族 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
血の子午線
S・クレイグ・ザラー初監督作。
カート・ラッセル、パトリック・ウィルソン、マシュー・フォックス、リチャード・ジェンキンス出演の西部劇。
撮影日数21日、製作費1.8百万ドルの低予算映画(ちなみにカート・ラッセル主演の西部劇ヘイトフルエイトは製作費44百万ドル)ながら、その佇まいが素晴らしい。
『ガンマンvs食人族』というタイトルに一応偽りはないが、その撮り方が非常に冷静。さめている。思っていたのと違う。
アクションやスプラッター映画に付き物の「煽り」が皆無。焦らすわけでも急き立てるわけでもなく淡々と一定のテンポで刻まれるカット。ごく普通のドラマみたいな撮り方。ちょっと渋めのロードムービーといった趣き。
普通の撮り方、普通のテンションのまま、ザクっといくから、えっ何これ?となる。ザクっといくシーン自体は少ないが、思い切りが良い。食人系『グリーン・インフェルノ』が、お子ちゃまレベルに思える。
監督曰く、カサヴェテスや北野武に影響受けたらしいけど、確かに初期北野の「えっ、突然ここで撃つの?」的なドキっと感がある。気づいた時には全て終わってるみたいな。
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個人的には現代版『ワイルド・アパッチ』であり「ブラッド・メリディアン」だなあと。今時『ワイルド・アパッチ』やって、カッコ良く決まるというのは凄いことだなあとも思う。
『ワイルド・アパッチ』は騎兵隊のラッパが命取りになるが、本作では喉笛で救われる。その対比が素晴らしい。
(葉巻のあたりも『ワイルド・アパッチ』だなあと思う。)
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キャスト全員が、奇跡的に良い。
『LOST』以外は全てダサいが定説のマシュー・フォックスがカッコ良くて驚く。
リチャード・ジェンキンスのオジさん臭い喋りのトーンが映画に上手くハマっている。
カート・ラッセル、個人的には『ヘイトフル〜』より本作の方がイイ。
コイツ役に立つのか?と思わせておいてのパトリック・ウィルソンが素晴らしい。
この人の色気みたいなもんが、話の牽引になっており、冷めた撮り方に熱さを加えていて、とても良かった。
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追:S・クレイグ・ザラー、小説家・音楽家としても活動中。彼の小説「Wraiths Of The Broken Land」はリドリー・スコット監督が映画化を狙ってるらしい。「ブラッド・メリディアン」好きなリドリー監督、なるほどの組合せだなと思う。
エンドクレジットの歌はS・クレイグ・ザラー作らしいが、「四人の男が国境を越えていくよー」ってマジメなのかフザけてるのか、良く判らない歌で、その得体の知れなさが面白い。