「告発モノながら、構成や語り口の面が目を惹く異色作」汚れたミルク あるセールスマンの告発 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
告発モノながら、構成や語り口の面が目を惹く異色作
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『ノー・マンズ・ランド』でその名を轟かせたダノヴィッチ監督。ユーゴ出身の彼が本作で選んだ舞台はパキスタンだ。妻や親たちに少しでも楽をさせたいと奮起して世界的な多国籍企業の営業職に就いた主人公。前半は彼の成功物語かと思われるも、中盤から一変。粉ミルクをめぐる社会派のアプローチを見せ、主人公が次第に追い詰められていく姿を描く。衛生状態の悪いこの国では、水質の悪い水で粉ミルクを溶くことで多くの乳児が健康被害に陥っていたのだ。
そもそもダノヴィッチはボスニア紛争の映像カメラマンとしてキャリアを始動させた人だが、故郷を遠く離れた彼がアジアの片隅で起こった“一人の男の戦い”に関心を寄せ(この主人公もまた故郷を遠く離れることになる)、「再現ドラマ」と「映画化を検討する製作チーム」という二重の構成でストーリーを織りなしている点も目を惹くところ。告発モノながら、語り口や構成上の実験要素が絡み合った異色作と言えるだろう。
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