「監督の色」裏切りの街 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
監督の色
三浦大介監督を今回2回目の生見物。飄々として中々喰えない感じの人だ。監督と言うより劇団主宰者、演出家、そっちのほうが世間では有名なんだろうか。もう随分と芝居を観ることから遠ざかっているので疎いのだが。。。
上映後のトークショーで、大根仁監督との対談では、正直余り興味深いことは聴けなかった。もう随分一緒に仕事してきている2人なのだから、もう少し裏の話や、お互いの作品の指摘を聴きたかったのだが、なんだか馴合いトークに、無駄な時間だけが過ぎて・・・
そんな監督の今作は、元々dTVというdocomoがやってるスマホを媒体とした放送局のドラマコンテンツを映画用に再構築したものらしい。だから何となく話の世界観が狭いというか、奥行きがあまり感じられないと受け止めたのか。舞台が総武線東中野から東荻窪程の間の話だから、その辺りもdTVの縛りなのか、それとも劇団員が棲んでる率が高いからか、馴染みはなくはない。
ストーリー的には、出会い系サイトで出会った男女の2ヶ月位の悲喜交々、互いの家族や関係者も巻き込んでの愛憎劇というカテゴリなのだが、今の時代を反映して、修羅場にはならない。しかし、その辺りが三浦監督の得意というか、この人ならではの視点なのだが、台詞の裏の隠れた気持ちや機微を観客に想像させる演出が散りばめられている。前回の『愛の渦』でもそうだったが、現在の男女のドライさと、しかしそれでは割り切れない奥底の叫びみたいなものを上手く表現させているのは、流石演劇畑の真骨頂なのだろうと思う。前半の冗長がちょっと辛かったが、その分のフリの回収が面白く、しかし適度の裏切りもあって、これも又『裏切り』というテーマの一つなのかなと邪推したりする。
行われている行為はなかなかハードな出来事(妊娠等)なのだが、主人公の男と女の自覚の無さや覚悟の欠如がまた現代社会を投影しているようで、胸が痛いのも事実。正直この作品はまんま『自分自身』に突きつけられている気がして、かなり観るのが恥ずかしくて辛い。そう、『恥』という感情を露呈していく作品は、この監督の十八番なのだろう。
寺島しのぶの脱ぎッぷりは相変わらずの称賛だが、今までにあまり観ないタイプの役をこなしたことへの驚きは大いに感じられる。