「苦難のポーランドを描き続けたワイダ監督の最終章に…」残像 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
苦難のポーランドを描き続けたワイダ監督の最終章に…
キネマ旬報では3名の選考委員の1位評価の
結果、第11位に選出された
アンジェイ・ワイダ監督の遺作と知り、
初鑑賞した。
この作品では、芸術の分野にまで
あからさまに踏み込み人間の尊厳を否定する
社会主義体制の暗黒面を見せられて、
最後の最後まで、主人公の
沈鬱で辛い人生描写が重苦しく綴られ、
戦後のポーランドが
国民のためにあるのではなく、
ソ連支配下での共産党政権のための国家で
あったことがヒシヒシと伝わってきた。
それだけに、本編ではないエンドロールの
色彩豊かな映像には、主人公が生きたのが
民主的な自由な社会であったならとの
希望の映像として心を打った。
それにしても、主人公を必要以上に
悲惨な状況に追い詰める面々の、
人間としての心情は、
人によっては苦渋の行動でも
あったろうと信じたいが、
実際はどうであったのだろうか。
苦難のポーランドを描き続けたワイダ監督
だが、検閲部署との闘いで
妥協せざるを得なかった話も伝わる中、
あのソ連支配の中で、
「灰とダイヤモンド」等で
巧妙に反体制的内容を含み入れた
卓越した能力と努力に対しては
頭の下がる思いだ。
この作品については「灰とダイヤモンド」や
「コルチャック先生」と比較すると、
ストレート過ぎて重層さに欠ける印象だが、
ソ連支配のたがが外れた後のワイダ監督の
創造への喜びは如何ほどであっただろうとの
思いも頭をよぎった。
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