劇場公開日 2017年1月7日

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「政治の狭間に生きる家族への思い」The NET 網に囚われた男 songさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0政治の狭間に生きる家族への思い

2017年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

凄い映画を観た。
 鬼才キムキドク監督『網に囚われた男』
 北朝鮮と韓国の軍事境界線近辺の寒村に住む川漁師の平凡な男は、妻と幼い愛娘と共に貧しくも平穏な日々を送っていた。ある朝、男はいつものように小さなボートで漁に出かけるのだが、魚網がエンジンに絡まりボートが故障してしまう。川に流され自らの意思に反して韓国領に流された男は、韓国の警察に拘束され北朝鮮を憎悪する取調官に狂気のごとき尋問を受ける。かたや男の潔白を信じ、彼の身を案じる警護官の心の葛藤を見事に対比させている。物語はここからはじまる。

 韓国と北朝鮮との政治の狭間で苦悩する今の朝鮮半島の状況を、そして一人の人間として家族を思う人間らしい感性を、この男を通じて見事に表現してる。社会ドラマであり人間ドラマだ。

 在日コリアン3世の私自身、ピョンヤンへもソウルにも数え切れないほど行ってるし、北朝鮮にはかつての祖国帰還事業で渡った親族(現在行方不明)もいる。韓国は、朝鮮戦争で一家離散した私の本籍地があり、そこは祖父や祖母が育った小さな村がひっそりある。どちらも私のかけがえのない故郷だ。

この男の苦悩は私の心情のどこにぶつけたらいいのだろう。

song