「ソンもジアもボラも、みんな抱きしめてやりたい。」わたしたち 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
ソンもジアもボラも、みんな抱きしめてやりたい。
ソンもジアもそしてボラも、もうみんな抱きしめてやりたい。そんな気持ちになった。
小学生の頃を思い出す時、ついつい楽しくて無邪気だった頃のことばかり思い出してしまうけれど、そういえば子供であるが故に今よりもずっと傷つきやすくて同じくらい残酷だったっけ、とこの映画を見て思った。小学校の教室で繰り広げられていた友情は、確かにこんなに不安定で頼りなくてか弱かった。自分がソンだったこともあった。ジアだったこともあった。ボラだったこともあった。3人ともかつての私だった。そして、ソンの時も、ジアの時も、ボラの時も、それぞれに苦しくて切なかった記憶がある。だからこそ、もう見ていて胸が痛くて痛くて、切なくてたまらなくなった。
冒頭のドッジボールのチーム分けのシーンからして胸が痛い。あんな残酷なことが、確かに毎日行われていた。あのシーンのソンの表情がまた切ない。演技とは思えないほどリアルで胸が痛い。そしてそこからの物語も、胸が痛くて切なくて、でもなんだかどこか身に覚えがあるような、そして思い出の痛いところを鋭く突きさされたような思いの連続だった。だれが悪いとか、そういうことじゃないんだよね。ボラが特に意地悪な女の子に見えるけど、そうじゃない。ジアが裏切り者に見えるかもしれないけどそれも違う。小学校と塾と家という狭い世界の中で生きる小学生たちにとって、仲良しグループという存在がいかに重要で、そこでいかにうまく渡り歩くかは、あの頃本当に深刻な問題だった。そんな世界で、やりきれない小学生たちの友情のすれ違いを、ここまで写実的に映像化した映画を初めて見た。私情を挟むでもなく、批判を打つでもなく、ただただ写実的に子どもたちの「社会」を描いて見せた。かつての現実を直視させられて、あまりに辛くて胸が痛むが、それでも素晴らしい映画だったと言わざるを得ないと思う。
赤く染めた爪と、その上から塗った水色のマニキュア。時がたってそのどちらもが剥がれ落ちてしまった。そして最後にわずかに残った赤い爪に、ほのかな希望を託す。やっぱり胸が痛いラストシーンだけれど、これ以上ないエンディングだったと思う。