「嫌悪感のブーメランにやられた」サファリ doronjoさんの映画レビュー(感想・評価)
嫌悪感のブーメランにやられた
美しく逞しい動物に対して肉体的にも精神的にも醜い娯楽ハンターが黙々と描き出されて行く。
「殺しているのではない、死に行くものを仕留めているのだ」
「むしろ自然の調和に貢献する行為だ」
狩猟を楽しむ人の自己正当化の言葉に観客は嫌悪する。
しかし、その嫌悪はだんだんと、自分自身にも向けられていく。
我々も、白人ハンターが黒人にさせているように、見えない誰かに動物を殺させて日々生きているし、肉の美味しさや値段を楽しそうに談義していることに気付かされる。
動物の死のリアルな現場に向き合うハンターのほうがまだ真摯なのではないかとすら思わされてしまう。
引き立てられた嫌悪感がブーメランとして戻ってきた。
この映画はハンター批判なんかでは全然なかった。
仕留められるべきは映画を高みの見物している自分たちも含めた人間という動物だというメッセージだった。
後味は悪いが、人間という存在に向き合う大切な時間を与えてくれた。
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