「【自分の闘い方や生き方は自分自身で決める。それが”最も幸せなこと”ではないか。】」オリ・マキの人生で最も幸せな日 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【自分の闘い方や生き方は自分自身で決める。それが”最も幸せなこと”ではないか。】
■1962年、フィンランドで行われたボクシング世界タイトルマッチを”挑戦者、オリ・マキ”の視点で描いた映画。
・オリ・マキはアマチュアからプロに転向し、10戦8KOのフィンランド期待のプロボクサー。なのであるが、序盤から、かなり舞い上がり気味のマネージャー、エリスにイロイロとプロモーションに引っ張りまわされ、困惑している姿が可笑しみがある。
・フツー、ボクシング映画といえばタイトルマッチ前の記者会見で、お互いに
”お前を10秒でオネンネさせてやるぜ!””貴様!”などと、無駄に罵り合い周囲から、”マアマア・・”などと引き離されるシーンが挟まれた後に、”伝説の男同士の闘い”が繰り広げられ、最後は二人で涙を流して抱き合い、チャンチャン・・。大団円。
というパターンが多い気がするが、今作ではそのような場面は一切、出てこない。
時代背景もあるだろうが、
選手同士と取り巻きがカメラに向かって、ファイティングポーズを決め、フラッシュがパシャ!。とか、
インタビュアーに対する受け答えも、”え、そんなんで良いんですか?”というフツーな感じである。
■今作が可笑しみとペーソス溢れる作品だと思った場面
・中々、リミット体重まで落とせないオリ・マキが、実は試合直前にライヤという女性に恋をしてしまい、インタビューの最中も”ボンヤリと”ライヤを見つめ、質問を聞いていなかったり・・。
・オリ・マキが棒の上の板の上に横になった女性を、棒を狙って球を投げ、水に落とす”不可思議”なゲーム(誰か、教えてください・・。)をライヤと楽しくやった後、後日一人でその光景を見て、楽屋裏で鬘を取り、寂しげに髪を拭く姿を見る場面。自分も同じ”見世物”ではないか・・と思ったのではないかなあ・・。
・試合数日前、公開スパークリングがあるのに、オリ・マキは故郷に戻ったライヤに会いに行き、ポロポーズ!そして、ライヤからOKの返事。フツー、こう来たら、怒涛のファイティングでチャンピオンベルトを奪取し、”ライヤー!”とリング上から叫ぶと思いきや、あっさり、2ラウンドでKO負け・・。盛り上がらないなあ・・。オリ・マキは”ホッとした感”さえ、漂わせている。
・けれど、それでオリ・マキが”リベンジマッチ”で最終勝利する・・訳もなく、自由になった彼は、ライヤと二人でノンビリと手を繋いで、楽しそうに、線路を歩いたりする。で、ジ・エンド。
<従来のボクシング映画の色合いとは、かなり異なるトーンのフィンランドボクシング映画。
物凄く感動するわけではないが、ボクシング映画なのに、何だかほのぼのとしてしまった作品。>
■蛇足
・オリ・マキを僅か2ラウンドで退けたアメリカ黒人ボクサー”デビー・ムーア”が、あの試合の半年後にボクシングの試合で亡くなっていた、という事実にも驚いた。(今作品では、一切触れられていないが。)