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ブルガリア鉄道の誠実な線路保安員のツァンコ(ステファン・デノリュボフ)は線路点検中に大量の現金が線路上に散乱しているのを見つけ警察に通報する。これは実話で監督・脚本のペタル・ヴァルチャノフさんが実際に新聞に載った拾得記事を基に本作の構想を膨らませたと言っている。
やりての官僚ジュリア・スタイコワ(マルギタ・ゴシェバ)は客車の払い下げ汚職の疑惑で窮地に立たされた運輸大臣のイメージ回復にツァンコの大臣表彰を企てる。
褒章は腕時計だがこれが安物のデジタル時計で役立たず、ジュリアに預けた前の時計は無くされたあげく不誠実な対応にツァンコは翻弄される。
ツァンコは見かけによらず正義感の持ち主で仲間の機関車の燃料抜き取りを告発するが、これもとり合ってはもらえない。マスコミがツァンコに接触することで話はとんでもない方向に、当然、策士のジュリアも黙っている訳は無い・・。
まるで忖度官僚の告発映画のようだが実際にブルガリアは汚職まみれ、今年3月にもボリソフ元首相やゴラノフ元財務相を含む数人の元政府高官が逮捕されているからブルガリア市民にしてみれば納得のプロットなのでしょう。忖度官僚の暴挙は日本でも横行しているようですが真相はうやむやのまま、他人ごとではありませんね。
ただ、政府への批判的メッセージ性が表立ち過ぎていると思ったのか、ツァンコを普通に描けばいいのに発話障害者にしたのは面倒な相手という印象付けかしら、不妊治療に振り回されるジュリアの私生活の描写は余裕のない様の強調で忖度官僚もまた人の子とエクスキューズをしているようでマッチポンプ、製作陣のスタンスに違和感が拭えない。暴力的結末の仄めかし方も、後味の悪さを引きずります。