劇場公開日 2017年9月30日

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「笑っていいホロコースト映画の本気」ブルーム・オブ・イエスタディ バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5笑っていいホロコースト映画の本気

2017年9月30日
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知的

ホロコースの映画、と聞くと、立派な内容なんだろうなとバカみたいなことを思いながら、どこか重苦しさを感じて観るのを躊躇したり、どこか「勉強」するような気持ちで足を運んだりする。歴史物の中でもとりわけ深刻な題材だからだ。

ところが現代を舞台に、ホロコーストの被害者と加害者それぞれの孫がドタバタな恋模様を繰り広げるコメディ仕立て、というかなり斬新な映画が現れた。

主人公の男女が不安定だったりエキセントリック過ぎたりしてついていけない人もいる気がするが、実はそれも、世代を重ねてもホロコーストを受け止められない結果とも言える。この映画が持っている躁鬱的なノリは、歴史的な悲劇はただ振り返ればいいのでなく、今に繋がっているのだと気づかせてくれるのだ。

ホロコースト映画という括りそのもをひっくり返す、まじめにふざけた現代の物語に仕上がっていて、歴史物に新たな可能性を拓いた功績も大きいのではなかろうか。

村山章