「そういう差別があること自体知らなかった」サーミの血 tokyotonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
そういう差別があること自体知らなかった
1930年代のスウェーデンで差別を受けていた遊牧民族の少女の映画。
差別という大きなテーマの映画というより、
差別を受けている少女が被差別から抜け出して生き抜くワンシーンを描いた映画という感じ。
差別と真っ向から戦うという映画じゃない。
あくまで個人が差別を受ける環境で、
その状況を抜け出すためにとても現実的に、
時には犯罪を犯してでも行動している映画。暗い。
どうにかして差別されるという状況から抜け出し、将来の道を切り開こうと一人で社会へ飛び込む様子は、
希望を背負うたくましさより痛々しく寒そうなたくましさが目立つ。
彼女が受ける暴言や暴力のシーンも痛々しいが、出自を尋ねられヨイクを歌っているときの周りの視線、空気のシーンが
この様こそ差別だと訴えかけてくる。
でもこの誕生日パーティの場に来るまでに、
主人公は相当な無茶をして来てるんだよね。
それでもこのざまで見世物と何ら変わらない。
まあ差別してる割に、
民族衣装を脱いでワンピース着てお化粧してたら見分けつくの?って感じだけど。
進学も無理だと言われ、民族衣装を着て見世物のように写真を撮られる。
研究結果という言葉は始め聞いたときは正直ゾッとした。
彼女に向けられる一斉の奇異の視線は気色悪い。
外へ出ても何処にも拠り所はなく、
帰る家にも自分の恐れる未来しかない。
浅ましく男の家で雇って欲しいという時の彼女の寒そうな目と、
彼女を通り過ぎて開けられる玄関のドアが印象深かった。
銀のベルトを売って進学しただろう彼女は、
最初のシーンの老婆になるまでにどんな人生を生きてきたんだろう?
冒頭の自分と同じ民族の人々を指していう差別的な言葉は聞いててキツい。
本人がこう言われてきたのでは?と推測してしまう。
1930年なんて、2000年現代のほうが医療も科学も人類学の調査の際のモラル領分でもずっと進歩しているはずだ。
そんな時代でも人間を民族単位で研究して結果を出せたらしい。
100年後の未来では今現在はどうはかられるのだろう。