「【“こうなる事は、分かっていた・・”と血の海の中、元刑事は虚ろな表情で言った。極悪な市長に呑み込まれて行く元刑事、検察官が辿った修羅の道を描く。観る側に強烈なインパクトを与える、韓国ノワール映画。】」アシュラ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“こうなる事は、分かっていた・・”と血の海の中、元刑事は虚ろな表情で言った。極悪な市長に呑み込まれて行く元刑事、検察官が辿った修羅の道を描く。観る側に強烈なインパクトを与える、韓国ノワール映画。】
■狂気の極悪市長を演じたファン・ジョンミン、病に臥せる妻のために、市長についたハン・ドギュン刑事を演じたチョン・ウソン、ドギュン刑事を慕っていたが、彼の勧めにより、悪の道へ落ちたソンモ刑事を演じたチュ・ジフンら豪華俳優が血まみれで、競演した強烈すぎる韓国ノワール映画。
ー 架空の街・アンナムを舞台に、再開発の利権をめぐり狂気に走るハク・ソンベ市長(ファン・ジョンミン)と利用される刑事たち(チョン・ウソン、チュ・ジフン)。
そして彼らを執拗に追う検事チャイン(クァク・ドゥオン)たちが繰り広げる、カーアクションやバトルが壮絶過ぎる・・。-
◆感想
・極悪市長ハク・ソンベを演じた、ファン・ジョンミンの演技が凄い。平気で、嘘の涙を流し、裏では非情に徹し、長年自らを支えて来たウン室長を、保身のためにソンモに殺させる。
全く目が笑っていない笑顔を湛え、市民の前では大仰なプレゼンをし、最後は、決して手を出してはいけない筈の、検察官まで平気で殺める姿。
権力に憑りつかれた狂人を見事に演じている。
・妻の入院費を稼ぐため、ハク・ソンベ市長の様々な悪事の後始末をする、ハン・ドギュン刑事を演じたチョン・ウソンも、それまでの作品での”良い人オーラ”を封印し、”検察と市長との間で板挟みになっていく男を好演している。
・カーチェイスシーンも、尋常でない緊迫感である。
ー 消防法の規制の違いもあるのだろうが、雨降る夜のカーチェイスシーンのスピード感溢れる迫力は尋常ではない。-
・現役刑事時代には、ドギュン刑事を慕っていたが、彼の勧めにより、悪の道へ落ちたソンモ刑事を演じたチュ・ジフンの、徐々にドギュン元刑事を軽んじるようになっていく姿。彼も又、権力と金の欲に溺れた一人である。
ー だが、彼は最後の最後で、ドギュン元刑事に対する情が出て、命を落とす。その姿を見たドギュン元刑事が、覚悟を決め、極悪市長を殺しに行くシーンの緊迫感や、極悪市長に屈していく検事チャインの姿も、印象的である。-
<ラスト、殺されたウン室長の葬儀場での、検察、市長、元刑事たちの醜いまでのやり取りは、手に汗握る。
そして、最後に極悪市長の額に銃弾を叩き込んだハン・ドギュン元刑事が、息絶え絶えに言った言葉。“こうなる事は、分かっていた・・。だけど、しょうがねえ・・。”
鑑賞後の気分は決して良いとは言えないが、観る側に強烈なインパクトを与える、韓国ノワール映画の逸品であろう。>