笑う故郷のレビュー・感想・評価
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Don't Cry for Me Argentina
原題は『著名な市民』『笑う故郷』では、誰が主語かで違ってきます。僕はこの主人公が笑っていると思いました。この作家が行き詰まりを感じ、突然良いアイデアを思いつき、『シメシメ』とこの故郷を心の奥底で笑っていたと思います。いわば、確信犯だと思います。故郷の人は笑っていません。怒っています。
『タンゴ』には『アルゼンチンタンゴ』と『コンチネンタルタンゴ』があります。
つまり、スペインから見れば、アルゼンチンこそコンチネンタルなはずです。イギリスから見ればアメリカがコンチネンタルですからね。政治を語るなと言ったニュアンスを語りながら、自虐的にアルゼンチンの発展途上振り馬鹿にして、それをネタにして私利私欲を貪っています。本音が分かれば、怒って当たり前でしょう。
市役所の待合室にエビータとペローの写真がもっともらしく飾られていますが、彼等は独裁者と言われましたヒトラー、フランコ、ムッソリーニとも関係がありました。この辺がこの作者が言う古い社会に留まっていると言うことだと思います。朝鮮民主主義人民共和国の金親子の写真を飾っているのと同じです。それは兎も角。
『Don't Cry for Me Argentina』ですね。
田舎町と文化とは
前半はほのぼの路線。故郷の人々の貧しくも暖かいモテなしに、こちらも日本を離れて15年の身として、それだけで結構ウルッとした。市民美術展の審査で地元の権力者とひと悶着あり、その後色々とありながらもなんとか乗り切っていくのかと思いきや、まさかのラストで度肝を抜かれました。
美術展の開会式で、文化とは何かということについての意見を述べるんですが、その洞察がすごい。当方も美術制作を行っているので、文化政策についてモヤモヤとすることが多いのですが、核心をついた内容が心に突き刺さります。
文化とはそもそも人が住む場所には自然に存在するのだ。それを保護やプロモーションだということを言い始めると、事がおかしくなる。文化政策は100%経済的な利益が目的である。と、大学の先生が言っていましたが、結局はそこにしがみつく自治体や政治家、住民、作家が作り上げる共同体に過ぎないのかもしれません。
もちろんそんなに事は単純ではなくて、ハイアートはそもそもそういったポピュラーな表現との垣根を作ることで成り立っていて、多くの主知主義的な生産物はそこから排出される分けですから、一概に文化政策を否定することはできないんですが。
出身地の田舎の文化イベントや現在住んでいる街のことを考えると、全然笑えない、非常に恐ろしい内容で、考えさせられました。
田舎者がリアルで怖い
過疎化の進む日本の地方をアルゼンチンの田舎に、東京をスペインに置き換えて鑑賞しても、全く違和感なく妙にリアルで説得力がありました。都会から田舎に移住するとこんな感じなんだろうな。IターンよりもUターンの方が、過去のしがらみがあるから余計にきついかも。
村では、身内、知り合いのオンパレード。身内びいきは当たり前で、芸術や文化なんて分からない。分からないというよりそもそもそんなことに興味ないでしょ 笑
スペインに移住したインテリなんて田舎者からしたらやっかみの対象にしかならないですが、作家にとってはこの貴重な経験もネタになんて、毒が効いていて面白すぎました。都市部から田舎に移住して周囲にフラストレーションがたまっている方にオススメです。
地味に面白い(褒めてる)
癖のある作家である主人公が故郷へ帰るのだけど
どうして帰る気になったのかわからなかったというか
英雄のなることに実は興味があるかなと思った
帰ると歓迎を受けるが表と裏の顔が徐々に見え隠れしてきて
様子が変わっていくのが絶妙でうまい
最後はかわいそうな展開になるのだけど
やっぱり作家のが一枚上手だった 笑った
主演の男優がいかにもひねくれてる感じ うまいなーー 面白い
事実も小説も奇なり
ヒスパニック系映画が続くのだが、今作品も又大変秀逸な内容である。特に一筋縄ではいかない主人公の作家とその生まれ故郷の人達との抜き差しならぬ交わりは、観ていてスリリングすら感じさせる。プロット自体はそれ程斬新ではないのだが、とはいえ所謂『勝ち組』だが皮肉屋の人間を主人公に据え、だが『錦を飾る』体で向かった故郷の人達は、表向き歓迎はしているが、それぞれの思惑が色濃く滲み出ているし、共にやっかみや嫌悪、主人公を利用してやりたい連中も又纏わり付いて、どんどん主人公に同情するようにシークエンスが進行してゆく。積極的な女の子は実は友人の娘であるとかの伏線もきちんと効いていて、これもストーリーに彩りを与えている。あんなに味方でであった友人は、実は妻の元彼である主人公に未だに嫉妬を拗らせていて、終盤のヒリヒリした『イノシシ狩り』のシーンは、主人公に憐憫をしてしまったのである。
だが、結局は主人公はこれも又小説の題材として、どっこい利用してしまうという中々のオチで幕を閉じる。最後のフラッシュを浴びての主人公の卑しい笑顔が、勝ち組の重要要素である『虚栄心』を見事に使い、成功したのである。
展開のスピーディーさ、登場人物の数の丁度良さ等々、コンパクトにそれでいて上手く膨らませる構造に唸るばかりである。人間の本質を秀逸に引き出し、演出をした監督に脱帽である。これこそ邦画では産まれない内容であろう。
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