雪女のレビュー・感想・評価
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【”淡々と進む、文芸調&エロティック雪女。”杉野希妃さんがお美しいのだが、今作後トンと見ない。どーしたんだろ・・。】
■ある吹雪の夜。
猟師・巳之吉(青木崇高)は山小屋で雪女(杉野希妃)が年上の猟師仲間茂作(佐野史郎)の命を奪う姿を目撃する。だが雪女は”お前は若いから殺さない・・。だがこのことを喋ったら殺す。”と口にし、消える。
その翌年、彼は美しい女・ユキ(杉野希妃)と出会い結婚し、直ぐに娘のウメを授かる。それから10数年後、ウメが可憐な少女へと成長したある日、巳之吉が雪女を見た山小屋で凍傷の跡がある遺体が発見される。
◆感想
・この映画は上映時、観ようかなあと思ったのだが、当時余り評判が宜しくなくて、見送った作品である。(今では、観たい映画は観るようになったが、当時はナカナカね・・。)
・で、観賞した訳だが、矢張り杉野希妃さんの美しさは抜きんでている。監督も担当している才女である。
・今作では、従来の雪女とは違う解釈、つまりは巳之吉が凍傷の跡がある遺体が発見された事で、ユキを雪女と疑いその事を告げるのだが、ユキは巳之吉を殺さずに、ウメを抱きしめ何処かに消えるのである。
<今作は、淡々と進む、文芸調&エロティック雪女なのである。
真夜中に観ているとチョイ、眠くなるが、寝ると雪女に殺されちゃうから、キチンと観たよ。>
美しく妖艶な雪女
ラフカディオ・ハーンの「怪談」は、柳田国男の「遠野物語」にも通じるような、静かな語り口の物語集である。ストーリーと若干の説明以外に余計な情報はまったくない。教訓めいた言葉も、縁起や因縁に関する言及もない。物語の底流にあるのは、未知の、理解不能な存在に対する恐怖だけだ。
キリスト教やイスラム教のようにすべてを司る唯一の神の存在を崇める一神教の精神性と異なり、八百万(やおよろず)の神という概念が古来からある日本では、万物に神が宿っている。神は崇高な存在ではなく、人間と同じように欲望があり、怨みもすれば嫉妬もする。
雪女もその神のひとつだと思われる。人間と同じように我儘勝手だが、人知を超えた能力をもつ怖ろしい存在である。しかし神なので怖ろしいだけではなく人知を超えた美しさを持つ。一般に雪男がどこまでもモンスターの範疇を出ないのに対して、雪女は自然に対する畏怖と憧れの混じった複雑な思いが生み出したユニークなキャラクターなのである。
雪女を演じた杉野希妃は顏も身体も美しく、妖艶である。それを強調するためにも、巳之吉役は偉丈夫であることが望ましく、青木崇高はまさに適役であった。
惜しかったのは登場人物に経年変化があまり感じられなかったことだ。娘のウメが大きくなった頃には、巳之吉がユキと出遭ってから15年も経っているのだから、巳之吉もハルもばあばも相当に老けていなければならない。そうすれば、ユキだけが歳をとらないのが際立ち、物語の異様さも増すはずだ。
しかし巳之吉もハルもばあばもユキが家に来た頃とあまり変わらない。ばあばの歳を考えると、15年経ってもまだ生きていさせるために、周りも含めてあまり歳を取らない設定にしたのかもしれないが、ユキも見慣れてくると凡俗の女に見えてきてしまうから、やはりまったく歳を取らない、人知を超えた美しさを表現すべきだったと思う。
その点をのぞけば、娘役の山口まゆもとても可愛かったし、静かな緊張感に満ちた、いい映画だったと思う。ユキの最後のシーンは意外にあっさりしているが、怪談はそんなものだ。むしろ最後は、老衰した巳之吉を看病する、14歳からまったく歳を取っていないウメのシーンがあれば、尚よかった気がする。
作りたい人が作った。
ちょっと期待しすぎたか
奥が深い作品
ファンタジックな作品は、何でもかんでも映像で説明しすぎる現在、この...
杉野希妃
監視と愛情
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