スターファイター 未亡人製造機と呼ばれたF-104のレビュー・感想・評価
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酷い実話
西ドイツ空軍が1962年に導入したロッキードのF-104Gはプロトタイプと呼ぶべき欠陥機で916機中262機が墜落し116人ものパイロットが死亡した実話です。短翼の超音速機なので操縦が難しそうなのは外見からも想像できますが、事故の多くは機体の問題なのでしょう、計器の不良やアフターバーナー、前脚の破損など設計上の欠陥も多く見つかっています、いきなりの大量導入ですので整備士も不慣れで不足していたのでしょう、軽量化の為エンジンは一基ですので故障は致命的です。
ロッキードが売り込みに賄賂をばら撒いたことは有名で日本でもロッキード事件は大事件でしたね、オランダではユリアナ女王の夫ベルンハルト侯の不正が発覚したが王配なので起訴を逃れている、ドイツでも国防大臣フランツヨーゼフシュトラウスが関与したが汚職は立証されず闇に葬られている。欠陥機を承知で金に目がくらんだわけではないだろうが何も手を打てない卑屈さは敗戦国の軍人の負い目なのだろうか。いつの世でも割を食うのは現場の若者というのは酷い話です。
後半のベティの真相究明の話になってからは緊迫感がやっと出てきたが前半はパイロットたちの軟派話ばかりで退屈でした、元はルクセンブルグのTV局RTLのテレビドラマなので社会性の高いテーマでありながら青春ものやメロドラマ的演出が多く、ちぐはぐさは興を削がれる気がしました。
冷戦を背景にした西ドイツ版『トップガン』かと思ったら全然違いました。
1965年。西ドイツの空軍パイロット、ハリーは次期隊長候補と目されていたがバーでナンパしたベッティにいいところを見せようと橋の下をくぐる低空飛行をしたことを上官に咎められ昇進を逃してしまう。その頃数年前から空軍に導入されたロッキード製の新型戦闘機F-104の墜落事故が頻発しておりハリーの同僚達も次々に命を落としていた。ハリーは油圧系統の点検不備を指摘、隊長のディーターに食ってかかるが事態は改善されない。そして今度はディーターが飛行中に失神する事故が発生、ハリーはディーターの意識を戻そうと機体を接触させるが・・・。
60’sサウンドに彩られたドイツ製『トップガン』みたいな話だと思ったら途中から社会派ドラマにシフト、ベッティが村八分に遭ったりとウィリアム・フリードキンの『L.A.大捜査線/狼たちの街』以来の意外過ぎる展開に。あくまで史実に忠実なドラマのようですが前半の戦闘機シーンに尺を割きすぎてバランスが悪い残念な出来になってしまっていました。それでもこんな社会派ドラマを真正面から作れるドイツという国の偉大さは感じましたが。
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