オン・ザ・ミルキー・ロードのレビュー・感想・評価
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クストリッツァ初洗礼!に立ち会う 。
やっぱり観たい、どーしても観たい…の気持ちが抑えられず。予告を観せたら一気にその気になった6歳児と、キホン付き合いのよい1歳児を引き連れて、久しぶりの「監督」クストリッツァを観に行きました。 時間も時間だったので、1歳児はお昼寝タイムで前半熟睡でしたが、6歳児は意外というかやっぱりフル参加。クストリッツァ監督の洗礼をばっちり受けたのでした。ワシだ!いやオオタカだ!ヘビが大きくなった!等ヒヤヒヤするほど多弁になったかと思うと、耳をふさいだり、手で顔を覆いながらも指の間から凝視したり。…ほほー、と余裕の構えでチラ見していたら、突如「あれ何?」「どうして?」という質問が。こちらも油断できず、どこまで・どんなふうに返すか?にも頭を使いながら観ました。(ちなみに、1歳児も、後半は目覚めてじーっと凝視…。) ガヤガヤ歩き回っていたかと思うと、屠殺された豚の血を浴びて赤く染まるガチョウたち。乱れ飛ぶ銃弾をかい潜りながら喋りまくり、卵を割り続ける兵舎の村人。冒頭からクストリッツァ・ワールド炸裂! これだけでわくわく。主人公に続いて美しいヒロインが現れ、テンポよく恋模様が繰り広げられ、皆が入り乱れて歌い踊る酒場のシーンになだれ込むと幸せな気持ちは最高潮に。…その一方で、絶頂の先にある不幸の気配に、心中穏やかではいられなくなるのでした。 戦争が終わっても銃撃は止まず、逃避行の終着は見えない。それでも、随所に驚きと笑い、スカッとする驚きやふっと温かくなるやり取りが織り込まれ、どこまでも目くるめく体験。どこを斬っても映画そのもの。美しさも残酷さも、やっぱり最後まで凝視せずにはいられませんでした。 6歳児は、本作で初めて「地雷」というものを知りました。私は、予告ではジャッキー・チェン映画的な笑いの材料と思っていた大時計が、生身の人間に牙をむく「歴史」の表れとだったと気付き、ぞわぞわとしています。思い返すほどに気付きや実感があり、これも良作の愉しみです。 そして勿論、クストリッツァ監督と言えば、ウンザ!ウンザ!とぐいぐい前のめっていく音楽。本作の余韻を味わいながら、ウンザウンザと口ずさみ、足を踏み鳴らせば、大抵のやり切れなさは乗り越えていけそうな気がします。ウンザ!ウンザ!
こんな映画、クストリッツァにしか作れない
宗教画のような厳粛さを持ちながら、スラップスティック・コメディが始まり、動物たちと人間が共存によるシュールな世界が展開する。戦争中の小さな村には悲壮感はなく、溢れんばかりの生のエネルギーが充満している。 舞台となる架空の村では、戦闘行為をしながら食事を準備し、銃弾の飛び交うなか雑談する。生活の中に戦争があり、戦闘行為がまるで人々の生活の一部であるかのようだ。 戦争終結をが宣言されてもヒロインの花嫁(モニカ・ベルッチ)は、終われ続け、終わったはずの戦争はずっと終わらない。遂には主人公と逃避行に出るが、どこまでも行っても戦争の影。 狂騒的な結婚式、迫力のウンザミュージック、笑いと涙と怒りが渾然一体となったクストリッツァらしい作品だ。
モニカ・ベルッチとラブシーンしたいから作った
…訳ではないと思うが。 初めてのクストリッツァ。日常の中の戦争/戦争の中の日常、ということでコメディタッチなのもあってどこか某アニメ作品を連想したりしなかったり。 シリアス部分もあるけど、全編に漂う緩さを楽しめるかどうかで、本作の評価も違ってくるだろう。
染みる染みる物語
映画は自由だ。 表現が自由じゃなくちゃ映画じゃない。 体制に媚びへつらい、必要以上のコンプライアンスに縛られて身動きのとれないメジャー映画に鉄槌をくだす会心の作品。 映像から音楽まで全て素晴らしい。
半狂乱で、虚構を愛して
☆良かったところ☆ 幼稚なおとぎ話なのか、過酷な現実の訴えなのかの境目を陽気に行き来しながらの自由すぎる展開にしては、こちらの批評屋観点を鞭打つ絶望へのダイナミズムのおかげで、作者によるご都合主義などといったちっぽけな穴には入りきらなかった、ああ、虚構のダイナミズム。 ★悪かったところ★ 作家性の強さゆえ本作で初クストリッツァの観客をはね除けるだろう。けど、芸術とはそんなものかも。
参りました
ずっと気になりつつ観なかった、クストリッツア作品、初見です。 初っ端の2カットで、すでに好きな予感がしました。 凝った映像が続き、状況を飲み込むよりはやく展開してしまいます。 面白いとも騒がしいとも、なんとも形容しがたいシーンが続きます。 それ故、静かなシーンはより効果的で、胸を打ちました。 オフィーリアを思わせる、川での花嫁衣装。 そして葡萄。 いったいどれだけのエネルギーでこんな作品を作っているのだろう?? 全く素晴らしい。 音楽の使い方も良かった。 好きな監督が増えてしまいました。 他の作品も観たいのですが、スクリーンで観るチャンスを待とうかな。
愛の記憶を絶やすな
戦争で混乱している時代。ロバに乗り兵士たちへ牛乳を届ける配達員の男。 ある日、村に連れてこられた美女に恋した彼の運命は一変する。 こんなに突っ込みどころ満載なのに、ファンタジーとして納得してしまうこの感覚。 生きることにはとても強欲なのに、命が絶たれる瞬間はとてもあっけなくて。 シリアスとコミカルは紙一重なんだなって体感した作品でした。さすが「アンダーグラウンド」の名匠。 劇中の楽曲がとてもキャッチ―で好みのものばかり。 衣装も独特の世界観で好きなシーンを切り抜いたスクラップを作りたくなる一作。
停滞
寓話と現実が交錯するこの監督の感性は相変わらずだ。美術は間違いなく最高だ。カメラワークも悪くない。しかし、彼は過去の作品である「アンダーグラウンド」を越えられない。その作品の磁場に捕らわれている気がする。割り切って作品を作り出すべきだ。薹(とう)が立ち過ぎたイタリア女優のモニカ・ベルッチをまだこれだけ美しく撮れるのだから、まだやりようはある。次回作に期待したい。
もう一度、観たい!
豊かな自然、美しい風景の中で、簡単に人が死んで行く映画です。 以下、感じたこと。 何となく平均寿命までは生きるかなと思いつつ日々を生きているが、死は特別なことではなく、状況によってはいとも簡単に大量に発生するもの。そしてそれは不可逆的であり、永遠に元の場所には戻れない。 逆に言えば、70億人も人口がいるので実感はしにくいが、今、生きれていることが奇跡なのかも知れない。
声を〝小〟にして言いたい❗️
監督や作品についての予備知識ゼロで鑑賞。 序盤は世界観や設定についていけず、アリャリャ失敗したかな⁉︎ と思って見てましたが、慣れてくると見事にハマりました。銃弾飛び交う日常下のハイテンションな人たちと人間世界の事情とは無関係にいつも通りな動物たち。合理的な判断など無視して、『追跡すること』自体が目的となった3人の兵士たち(殺してしまうと追跡が終了してしまうので弾が当たらないし、すぐに殺さない。仕事や部活などでも似たようなことはよく起こりませんか。なにかの資材を買うのが目的だったのに、いつの間にか資材を探したり、一緒に買い物してること自体が楽しくなって、目的の資材が売り切れだったりすると、ガッカリしながらも実はまだこの仲間たちと買い物が続けられる、と嬉しかったりする、みたいなことです)。 ファンタジーや恋愛、日常だろうと戦時下だろうと変わらない人間性、暴力がもたらす不条理さ。 そんな諸々を描きながら、エンドクレジットの音楽の間、ジワジワと全身が余韻に満たされていく。 もしかしたら、眠気に襲われてそのまんまという方もいそうな映画だけに、無理にとは言いませんが、是非みてください、と声を〝小〟にしてなら言いたい映画です。
戦火の中ロバで牛乳を運ぶ男と女の物語。男の元にはたくさんの動物たち...
戦火の中ロバで牛乳を運ぶ男と女の物語。男の元にはたくさんの動物たち。帰ってきたハヤブサ。牛乳の入った缶をミルクをジャバジャバこぼしながら運ぶ女のなんて美しいこと!ミルキーロードは愛と記憶の白い飛沫であり欠片。 愛するものを守りたい。一緒に生きていきたい。ただそれだけの逃避行。幾つもの困難に動物たちは手を貸してくれる。ミルキーロードのずっとその先は大きな安全な池。完成する時にきっと映し鏡のように出逢えるんだろう。あと、少し。そうだと、いいな。 今回CGを使ってはいるがクストリッツァの寓意を助けているだけで嫌な感じはしない。いつものイメージがたくさん登場し、なんだかちょっとホッとした。
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