「最高に暖かくてロマンチックなSF映画」メッセージ しんかいぎょさんの映画レビュー(感想・評価)
最高に暖かくてロマンチックなSF映画
インターステラー以来だろうか、SF映画を見て暖かな気持ちになれたのは
最初映画館で見たときは、理解が追い付かなかったが、ネット配信で再度鑑賞して、改めてほっこりした気持ちになれた。
これは主人公である言語学者の女性が、異星人とコンタクトをとるために相手と相互理解をしていくことで話が進んでいく。
この映画を初めて見る人は、唐突に挿入される主人公の過去のシーンに戸惑うかもしれない。
しかしである。。。映画の終盤になって、異星人の言語を理解することで、主人公は時間という概念から解放されていくということが明らかになると、過去のシーンはただの回想ではなく、実は過去と未来が混然一体となった景色だということがはっきりと理解されるのだ。
映画の序盤では「言語が文明を作る」といったセリフが出てくるが、例えば英語などの外国語を勉強したことのある人ならば、その意味が実感できるはずだ。
単に英語で考えられるようになるだけでなく、英語的な考え方をするようになるのだ。これが言葉の力である。
私自身の経験から言えば、英語を学習する過程で、色々な物事を構造的に理解する習慣が身に着いた。
端的に言えば、この映画はこの構図を思い切り拡大して世界観を作り上げている。つまり異星人の言語に時間という概念がないならば、それを習得していく過程でその人自身も過去/現在/未来という区切りから解放された世界に入れるということだ。
またこのことによって、この映画は観客にとても大切な教訓を残している。
それは過去の悔恨にとらわれず、同時にないがしろにもせず、また未来を悲観せず、今この瞬間を大切に生きるということだ。最後に助演のジェレミーレナーが「もし未来が見えたら選択を変えるか」という問いに「もっと気持ちを伝えるようにする」と答えていることが、もしかしたら監督の最も伝えたかったことなのかもしれない。
一切の皮肉などない、願いや祈りといったものが込められている、見ている側を暖かな気持ちにさせてくれる、とても貴重なSF映画の1本であることは間違いない。