「何故今この題材なのか」メッセージ トロさんの映画レビュー(感想・評価)
何故今この題材なのか
正直原作の特異性に比べて凡庸の域を出ていない気がする。
異星人とのコンタクトについて、大抵は省略されたり適当に済まされる試行錯誤の過程を丁寧に描く職人的なアプローチから始まり、主人公が見るフラッシュバックや彼女自身の語りに仕掛けがあり、最後に明かされる事実でなるほどと唸らされるよう設計された映画。
しかし、この程度の仕掛けは最近の創作ではよく見るレベルで、しかもSFならば非現実的な方法で解決できるから、少し強引さを感じる。10年前なら画期的だったかもしれない。
比較対象として適切でないかもしれないが、インターステラーでは執拗に伏線と考え方の説明があり、荒唐無稽に見える展開もしっかりとドラマと連動して最終的に非常にしっくりと腑に落ちて、大きな感動に繋がった。
メッセージにおいては、冒険したりといった展開の広さが大して無かったのにも関わらず、ドラマにも大して動きが無かった。時制の無い言語を理解しただけであらゆる時が見えるというくだりについては、伏線はあったがそれでも少し唐突に感じたし、その解決も、「あっ」というものではなく、あまりにも普通で嬉しい驚きが無い。もう少し丁寧に伏線を重ねたり、説得力のある説明や展開を用意して唸らせてほしかった。
宇宙人の言語についてのビジュアルは本当に作り込まれていたけど、そこで力尽きたか、あの異星人の安いビジュアルと、取って付けたように語られる動機はちょっと残念。SFとしての見掛けが、丁寧だけど退屈なのも微妙に感じる理由