「SFと言うなかれ…」メッセージ A.Camelotさんの映画レビュー(感想・評価)
SFと言うなかれ…
クリックして本文を読む
原作はもっとあっさりした短編なのでどんな本格SF映画に仕上がっているかと期待しましたがあまり良い出来栄えではなかったです。科学的な説明抜きで都合良く展開させてしまったためにファンタジーになってしまった感じです。レベルが違うSF? ファンタジーレベルでしょう。
思うに、原作を知らないと重要なことが理解しにくいのではないかと。特に、エイリアンの事象認知が人間のように時間経過的ではなく、最初から最後までを積分するような認知の仕方であることはこの物語の肝。で、それを如実に表すのがあの墨で描いたような丸なのだけれども、あの丸は簡略化し過ぎ。そんなことで中盤はもやもやして眠気を誘う結果に。
「言語」を「武器」と誤訳していた、というのが原作には全く書いてないこの映画のアイデア。で、エイリアンの言語を修得すれば、未来を見通せるようになるというのが最大の秘密だが、これも原作にはなく飛躍し過ぎ。まるで、フランス語を修得したらフランス人になってしまうファンタジー。
原作ではしっかり考察している、未来を見通す能力と自由意思とが両立できない点について、物理学者の彼が主人公のことを必ず選ぶという愛情表現に置き換えられ、すっかり矮小化。都合良くまとめられただけで見事でも何でもない。
まぁ、原作の言わんとすることが、この映画のおかげで深くなった点では良かったのかもしれません。ブレードランナーの新作が心配です。
コメントする