「心揺さぶられる作品。」沈黙 サイレンス Mi-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
心揺さぶられる作品。
始まりからエンドロールまで、余計な音のない静かな作品。風の音や虫の声、蝿の羽音、海の波音。
完全に、役者の台詞と自然の音のみ。
淡々としていて、また上映時間も160分超と長い。
それなのに、全く飽きさせる事なく魅せられた。
素晴らしい作品としか言いようがない。
異国の地日本の長崎にて、弾圧に耐え、己の信仰を試されるポルトガル人宣教師と貧しい百姓の切支丹たち。
神の沈黙の中、残酷な運命に翻弄される彼らの姿に胸を打たれた。
信仰とは何か、信仰のために命が奪われることの是非を考えさせられる。
そしてラストはなんとも言えない切ない気持ちになる。
キリスト教の迫害というテーマから、拷問シーンの残忍さに目を背けたくなったし、日本人切支丹の貧しさや汚らしさがあまりにリアルで驚かされた。
キャスティングはとても良かったと思う。特に日本人キャストは最高だった。
残忍な奉行井上役のイッセー尾形の無慈悲なさまとキチジロー役の窪塚洋介のクズっぷりが素晴らしい(笑)
1つ気になったのが、ポルトガル人宣教師のロドリゴとガルぺの綺麗さ?(笑)
迫害を逃れ身を隠し、貧しいボロを纏っているにしては……なんだか小綺麗に見えてしまった(笑)
個人的な意見として、この作品を観てキリスト教贔屓だとも感じなかったし、日本が排他的に描かれているとも感じなかった。
宗教弾圧は世界中どこでも、かつては行われていたこと。
弾圧する側は残酷で非情であるが、そこには異教を受け入れられない理由があるのだという事も理解できる。
永遠に考えさせられるテーマだ。
この作品を通して、スコセッシ監督と遠藤周作氏が何を伝えたかったのかをじっくり考えてみたいと思った。