「神が沈黙するなかで、辿り着いた信仰のありかた」沈黙 サイレンス つなやんさんの映画レビュー(感想・評価)
神が沈黙するなかで、辿り着いた信仰のありかた
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人間にとって神とはどういう存在なのだろうか。映画では残虐で過酷なキリスト教徒への弾圧が描かれるが、現代においても内戦や爆弾テロで無慈悲な死を遂げる人が少なくない。やはり、人間がいかなる過酷な状況に置かれようとも、現世において神は救いの手を差し伸べず、沈黙したままであると考えたほうが良さそうだ。だが、神が沈黙するからこそ、イエス・キリストが人々の憎しみを受け止め、弟子の裏切りを許したという行為が崇高なものとして語り継がれるわけであるし、この物語においても、殉教という道を選ばず、もっとも屈辱的な形での棄教を受け入れ、自分を売った弱き心の持ち主を許すという行為がひとつの愛の形として見えてくる。このように教義に従っての殉教ではなく、悩みもがき苦しみ、葛藤の果にたどり着いた自己犠牲と献身の行為に、人々は人知を超えた者の意思や存在を感じるのかもしれない。いやむしろ、愛の行為があるから神が存在するということと、神の存在を信じるからこそ愛の行為ができるという両輪の関係か。
キャストの話をすると、日本人の有名どころの役者がたくさん出ていた。やはりイッセー尾形は上手いなという印象。窪塚洋介も重要な役をしっかり演じていた。ただ、テーマが重すぎるのか、とっつきにくいのかアカデミー賞にはノミネートされず残念。原作を読んでいない人には難解で長い映画だったかもしれない。
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