「反応が結構分かれる」沈黙 サイレンス 卯月さんの映画レビュー(感想・評価)
反応が結構分かれる
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2時間40分という長尺を気にさせないほどに引き込まれました。
キリスト教が禁止されている日本が舞台なので、登場人物はほぼほぼ日本人です。なので、感情移入はかなりできます。
大筋としては、正義の宣教師が、悪の役人に弾圧される話とも取れます。
ただ、この時代のキリスト教の背景を語るなら、少し事情が変わります。もともと、海外に宣教師を派遣していたのは、ヨーロッパにおける宗教改革によって、プロテスタントが新しくでき、カトリックの権力が弱まったからです。そして、プロテスタントができたのは、教会が腐敗していたからです。
殉教は名誉だと、そうすれば天国にいけると、処刑された農民は言っています。が、ヨーロッパの教会では、殉教した人間などいませんでした。そもそも、殉教しても、教会の認める聖人でなければ、天国には行けないという”教義”になっています。それが、ヨーロッパからはるか離れた異国の地にて、宣教師の前で、矛盾として突きつけられます。そして、こう言われるのです、「彼らを救うのは神の教えか、それともあなた自身か」。
最後に、キリスト教を捨てたとしても、キチジローに赦しを与えることはできました。本来、カトリック教会に叙任された者のみが与えることのできる「秘跡」ですが、棄教し、同じになったことによって、初めて与えることができたのです。
と、キリスト教的な解釈をすることもできるのが、本作の魅力だと思います。
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