「命を救うのか魂を救うのか」沈黙 サイレンス フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
命を救うのか魂を救うのか
江戸時代の宣教師の苦悩を描いた作品
冒頭の湯気での全体が見渡せない雰囲気、主人公達の赴く村での霧のシーンなど、得体のしれない不安、掴みどころの無さなど開始そうそうに引き込まれました。
布教、師匠探し、信者からの需要、自分自身の信仰、大いなる覚悟の下、アンドリュウ・ガーフィールドとアダム・ドライバーの二人の試練の日々。話が進むにつれ揺らいでいく姿が全編通して良く描かれていたと思う。
日本俳優陣の演技もとてもよかった。主要人物は英語で台詞を言うのですが、浅野忠信以外はたどたどしかったように思う。
当時の日本に英語を話せる人が何人いたかわからないが、日本訛りの英語それはそれでいい味が出ていたようにも思える。
イッセー尾形の演技でしばしば笑えてしまったが、冷酷な時に見せる表情と緩急はさすがだなと感じた。
塚本監督はかすれ声と表情が正に幸薄い村民感だ出ていたし、芯に強い信仰があるからこそどんな事でも耐えられる、そんな目をしていた。
窪塚洋介の役は本当に難しかったように思う、弱い人間の姿、意地汚さ、苦悩、救い、一番人間らしいが一番成りたくない人間。
全てを演じ切れたようには思えないがそれでも観客の心に強く残ったはず。
以前「殺し屋1」見ていたため、浅野、塚本の新旧演技が比べられてよかった。
金子役のSABU、菅田俊も役人役で出ていたので少し嬉しかった。
スコセッシは「殺し屋1」見てるんじゃないだろうか・・・
現世で救う命と死後、天国で救われる命
宗教の命題、今作は明確な答えを出してくれない、そもそも答えなど無いのかも知れない。
ただそれぞれの信仰は自由だし誰も辞めさせる権利はない、全ては自分次第なのだ。
他人にとやかく言われる筋合いもないし言う必要もない、来る者を拒まず去る者を追わない事が大切なのかと思う。
自分自身あまり宗教とは関わりが有るほうではないが、信仰が有ることで強くなる人もいるし、どうしようもない状況から救われたい、縋りたいという気持ちも解からない訳でもない。
幸か不幸かそんなに追い詰められた状況になった事もないし、縋るほどのモノを持たないがこの作品を見て自分自身に納得のいく生き方ができればそれでいいのではないかと思った。
劇中セリフより
「神は許してくれますか?こんな俺でも」
罪を犯し懺悔すれば許されるのなら悲劇は続く、許さなければ永遠に落ちていく。
自分の行動に責任と納得できる行動をとる事、失敗したなら反省し次に生かすこと、小学校で習うような事を思い出した。
自分に出来るかわからないが、目指す意義はあると思った。