最後の追跡のレビュー・感想・評価
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これはある意味、最後の西部劇なのかもしれない
『ウィンド・リバー』『ボーダーライン』で知られるテイラー・シェリダンが脚本を手がけ、アカデミー賞では作品賞をはじめ4部門の候補入りを果たした秀作。日本では劇場未公開ながら、映画好きの人ならこの一本の中にどれほど西部劇の要素が組み込まれているのかが瞬時に見て取れるはずだ。
かつてのカウボーイたちが今や借金に苦しみ、貧困の連鎖をどうにか食い止めようと、その身を顧みない決断を下しゆく様に言いようのない悲哀や苦しみを感じずにいられない。白人とネイティブ・アメリカンからなる二人の保安官が交わす「かつて白人たちが奪った土地が、今度は銀行に奪われようとしている」というセリフが極めて示唆的でもあり、この絶望的なほど広大な舞台にアメリカの歴史や社会性が全て凝縮されているのも高評価の理由の一つなのだろう。強盗を繰り返す兄弟役の二人の演技が素晴らしく、彼らを追うジェフ・ブリッジスの力の抜けた演技も忘れがたい。
なんとも粋な現代型西部劇
第89回アカデミー賞4部門ノミネートということと、久しぶりにジェフ・ブリッジスの演技を観たくなり鑑賞。
これは文句なしに星5つ。映像・音楽・ストーリー・役者陣の演技・ファッション等々、全てが好みだ。どの部門で受賞しても全く不思議ではない。
冒頭から、水色のアメ車がテキサス西部の青い空黄色い荒野を走り抜けていくシーンに一気に心掴まれる。
クエンティン・タランティーノ監督やロバート・ロドリゲス監督、はたまたコーエン兄弟風というのだろうか、とにかくテンポの良いウイットに富んだ会話を重ねながらどんどん登り詰めていき、とにかくラフだが粋なぶっ飛びかたで全てを描き切っているのがどストライク。そして登場人物みんなが、やたらと男くさくて最高にしびれる。
少し短め上映時間102分の古典的な敵討ち話的なところも、ストレスフリーで好感度高い。
本作監督のデヴィッド・マッケンジー作品を観るのは今回が初めてだが、一気にその世界観にハマってしまった。近々他の作品もぜひともコンプリートしたい。
個人的には今年観た映画作品の中では、1番面白かったと言ってもいいかも知れない。
最後の強盗
2024年11月13日
映画 #最後の追跡 (2016年)鑑賞
牧場を差し押さえから守るため連続銀行強盗に手を染める兄弟
定年目前のテキサス・レンジャーは相棒のインディアンと事件の捜査に
安定してる作品ですが、少し地味かな
これも西部劇?
西部劇をフォーマットに、「資本主義」を描く
「銀行強盗」と彼らを追う「保安官」
西部劇で定番の構図だが、舞台は現代。
あと「ロビンフッド」みたい、とも言える。
リーマンショックを念頭に置いているのかも。
だからこそ、主人公たちを支える(?)周囲の人がいるワケで。
「善悪」を観客に問う作品
傑作だ
現代の銀行強盗とテキサスレンジャー的な警察官との闘いが熱い。弟がお腹を撃たれているのにそれに気づかないお兄ちゃんが頭をバンバン叩く。弟もお腹を撃たれたとは言わない。少額の銀行強盗なのがクレバーで、カジノでマネロンするのもすごい。銀行が悪いのもとても現代的だし、弁護士が協力的なのも男気を感じる。自警団とジェフ・ブリッジスが協力して狙撃する山の場面も最高だ。弟の元奥さんと子どもたちとの感じは身につまされる。全部の場面が面白い。
男たち、荒野の彷徨
アメリカでは“現代西部劇”と評され、オールド・ファンの支持を集めたらしいが、個人的には懐かしくもあり新しくもある不思議な魅力の作品であった。
厳密には西部劇ではないのだ。現代が舞台で、コンピュータやスマホもそれとなく登場する。
が、米テキサスの広大な荒野の風景が堪らなく西部劇の雰囲気を駆り立てるのだ。
また、シンプルなストーリーも。
銀行を襲う強盗兄弟。
それを追うテキサス・レンジャー・コンビ。
西部劇タッチの犯罪劇。そこに、貧困や先住民などアメリカが抱える“今”やテーマも挿入。
脚本は『ボーダーライン』と本作と『ウインド・リバー』の“フロンティア3部作”で名を馳せるテイラー・シェリダン。
アメリカの“闇”を社会派テーマと骨太なエンタメで描き、映画ファン/批評家双方から人気のある映画作家。本作でアカデミー賞の作品賞と脚本賞にノミネート。すでに『ボーダーライン』の脚本で注目されていたが、本作は特に評価され、名を広める一作となった。
監督デヴィッド・マッケンジーの手腕も手堅い。
2016年のNetflix配信作品。この時からずっと気になっており、やっとやっと鑑賞。
評判違わずの見応えある力作。
話はシンプルだが、非常に味わいあり。
銀行強盗兄弟のタナーとトビー。
弟トビーは真面目な性格。兄タナーは気性の荒い性格。
開幕いきなり銀行襲撃で始まり、兄弟が銀行をするに至った経緯は描かれないが、台詞の端々から窺える。
計画を立てたのは弟トビーの方。兄を誘ったよう。
銀行を襲う理由も、亡き母親の残した農場の借金返済。農場からは石油が採れ、トビーは別れた妻と暮らす子供たちに譲ろうとしている。
家族と一族の為。犯罪に手を染めてしまった事は愚かだが、彼は彼なりの“正義”と“信念”で動いている。
一方の兄タナーは…。暴力的だった父親を殺した過去を持つ。銀行強盗含め幾つもの前科あり。ムショ帰りの身でもある。彼がこの計画に参加したのは、家族(唯一の身寄りの弟)や一族の土地の為ではないだろう。根っからのワル。このスリルが好きで堪らない。
慎重派の弟と粗野な兄。だから衝突は度々。
が、決して兄弟仲は最悪という訳ではない。母親を亡くし妻子とも別れ、孤独の身のトビー。唯一頼れるのは兄だけ。タナーも荒々しく見えて弟思いの所がある。腐っても、切っても切れぬ兄弟の縁。
クリス・パインとベン・フォスターが熱演。
襲うのは郊外の支店。人の少ない開店直後。トビーの立てた周到さ。
襲撃したら出たとこ勝負。タナーの行き当たりばったりな大胆不敵さ。
それらが不思議と上手くいき、成功してきた。
が、ある時どうしてもデカイ山が必要になり、初めて急遽の計画変更。
郊外の支店ではあるが、これまでよりずっと大きな銀行。移動でギリギリ開店直後には間に合ったが、その日は給料日で、店内にはすでに多くの客が。
たった一つの小さな綻びが、連鎖的にミスを呼び込む。
警備員と客の一人が抵抗で発砲。撃ち返し、死者を出してしまう…。
慌てて逃走。これまで一切足が付かなかったが、遂に足が付いてしまった…。
そんな二人を追うテキサス・レンジャー・コンビ。
ベテランのマーカスと相棒のアルベルト。
この二人、相性抜群の名コンビ!…という訳ではない。相棒ではあるが、上司と部下でもある。
アルベルトはインディアンとメキシコ人のハーフ。真面目な性格。
一方のマーカスは典型的な口の悪い白人男。ジョークでまぶした人種差別的な発言でアルベルトをちょくちょくからかい、アルベルトは逆上する事はないがほとほとうんざり。
「俺のジョークが恋しくなって、俺が死んだら墓の前で思い出し笑いするだろう」「明日にでも願いますよ」…といった具合。
だけどアルベルトが心底マーカスを嫌悪していないのは、呆れているけど、マーカスの強い正義感があるからだろう。
マーカスは定年退職目前だが、執拗に捜査を続ける。
マーカスの最大の武器は、熟練さと土地勘。長年テキサス・レンジャーとして培った経験で、襲った銀行や僅かな情報を頼りに、行動パターンを見定めていく。
次奴らが襲うのは、ここ! 現場に向かう途中で緊急連絡。銀行で発砲発生。
ビンゴ! 絶対に捕まえてやる。
ジェフ・ブリッジスがさすがの重厚な演技と貫禄と存在感。
相棒役のギル・バーミンガムも好サポート。
作品は犯罪劇ではあるが、男たちの宿命、哀しみ、廃れた生きざま、その中に時折美しい孤高の姿が浮き上がる。
なので、渋く、硬派な作り。
もっとドンパチが見たい人には物足りないかもしれないが、本作はあくまで“現代西部劇”であり“犯罪劇”であり、“ヒューマン・ドラマ”であるのだ。
が、終盤の銃撃戦シーンは、荒野の風景とヒリヒリした雰囲気がスリリング。
結末もスカッとするものではないが、見る側に突き付ける。
追われる兄弟は別れる。負傷した弟を逃がす為に金も持たせて、兄は自分が囮になる。勿論再会は大前提だが、ひょっとしたらこれが今生の別れになるとお互い思っていたかもしれない…。
タナーは崖の上から発砲。その弾が、アルベルトの頭を貫く。
相棒を殺され怒りに燃えるマーカス。タナーの位置を狙えるさらに高い崖に回り込み、撃つ!
タナーは射殺。
これで一応事件は解決。地元警察も全てタナーの犯行とするも、マーカスは腑に落ちない。
強盗は二人組み。無鉄砲なタナーが一人で計画し実行したとは思えない。
タナーの素性が判明したので、易々とトビーに辿り着く。
警察は真人間のトビーは事件に関係ないとするが、彼の背景や土地の事から確信する。
弟が、主犯だ。
トビーとマーカスが対峙するクライマックスがハイライトと言えよう。
すでにマーカスは定年退職。逮捕する事は出来ない。
トビーは銃を構えるが、撃つ気はさらさらないだろう。
ひょんな事から銀行強盗になり、それを追う側に。
こうして生き延び一応の安住を手に入れたが、代償は大きかった。
トビーは兄を亡くし、マーカスは相棒を亡くした。
双方痛み分け。この“罪”や“痛み”を一生背負って生きていく事になる。
得られたものは何だったのか…?
いや、この追いつ追われつの果てに、勝者はいなかった。
逃走と追跡は終わったが、二人の空虚な心は当てもなく彷徨し続ける。この荒野の中を。
果たして決着はどうつくのか
銀行強盗の兄弟と二人を追うテキサス・レンジャーのコンビがそれぞれ背負っている人生の重みを感じさせ、魅力的です。単に善悪で片付けられないストーリー展開です。
ジェフ・ブリッジスが主演のためか、追う者の立場から「最後の追跡」と邦題がつけられていますが、内容的にはいかに逃げ切ることができるかを描いています。
銀行強盗を働くハワード兄弟が次々と事件を重ねます。彼らの行状から見えてくるのは、銀行に借金のかたとして取られた牧場を守るために、その銀行の支店を次々と襲い、その奪った金で借金を返済するという魂胆です。彼らの牧場に油田が見つかったため、何としても土地を死守しなければならないのです。
アメリカという国は自分の土地を守ることに敏感です。白人がインディアンから土地を奪い、鉄道を敷設するために牧場が買収され、今は銀行が借金のかたに奪うという構図です。
一方で、この銀行強盗を追うテキサス・レンジャーは退職間際のマーカスと相棒のアルベルトのふたりです。マーカスは口が悪く、インディアンとメキシコ人の血を引くアルベルトを小馬鹿にしてからかう尊大なところがあります。
アルベルトは白人によって土地を奪われたインディアンを祖先に持つことからマーカスの毒舌には辟易としています。
銃撃戦で兄弟の兄とレンジャーのアルベルトが命を落とします。
逃げ延びた弟トビーは借金を銀行に返済します。牧場を守った弟は離婚した元妻と息子たち二人に牧場と石油の利権を譲る手はずを整えます。
マーカスは弟に狙いを定めています。トビーもすべての片がついたため、対決のときが近いことを悟っています。双方ともに、大切な相棒を死なせた遺恨をはらす決意を固めているのです。
面白かった。 日本で公開されてても果たして観ているかは不明。 オー...
面白かった。
日本で公開されてても果たして観ているかは不明。
オーディオブックもそうだけど、ネット経由では、アナログでは手に取らないものに興味が湧き、めっちゃ良作に出会ってる。
西部劇臭がムワッと匂う。
荒野テキサス、そこは別世界…
犯罪者は撃ち殺す。銀行強盗も銃を持って追い掛ける。無骨な男たち、女性も強し。土地柄が全面に出ていて興味深かった。ジェフ・ブリッジスが相棒に憎まれ口を叩くのが何とも面白い。めちゃくちゃな理不尽さに笑えてくる。強盗犯である兄弟もべたべた仲良くせず、語りも少ないが、弟思いの兄、それがわかる弟、味がある。終わり方はあれで良かった。
アメリカの抱える貧困問題と兄弟愛
最初は退屈なストーリーに感じてましたが、観終わってから訴えられるメッセージがあるように思えました
兄弟が2台の車に別れるシーンはジーン、でもそういう兄弟愛のストーリーではなく、「先住民の土地を奪った白人、その白人の土地を奪う銀行」というセリフにあるようにアメリカの貧困問題がテーマなのかと
今作では重い物を抱えたような深い演技でいつもと違うクリス・パインがとっても良かったです
ちょっとスローテンポ
銀行強盗を繰り返す兄弟(似てない)と、定年目前の保安官(でいいのかな)。
銀行強盗もテキサスらしい(行ったことないが)、のんびりした手口だし、追う方も全然急いでないし。(笑)
防犯カメラもあることはあるがなぜか映像を見せてもらえないっていう、のんびりした時代。
途中かわいそうなシーンもあったが、結果うまくいってしまう。
一応職業柄追跡するのだが、どこが牧歌的。
ちょっと間延びした進展に途中飽きてしまった、かな。
古き良きアメリカという感じの作品だった。
ザラストカウボーイ
ジェフブリッジスは、定年のテキサスレンジャー
彼は、ラストアメリカンヒーローが好きでしたね。
クリスパインとベンフォスターは、兄弟の銀行強盗
訳はあるんだ。
兄弟を追跡する2人のレンジャー 1人は、チョロキーだ。テキサスは、サムペキンパーもよく撮影していたな。
ベンフォスターは、よく頑張ったよ。
ラストのクリスとジェフの会話は
人としての掟を問われるんだな。
いい作品でした。
映像のトーンが素晴らしい
Netflix凄いなぁ…兄弟とレンジャー2人の4人で進むストーリーは、それぞれの立場で当然の乖離があり、哀愁を感じざるを得ない。そこを、舞台であるアメリカ南西部の荒涼とした土地が作品全体に意味づけしている。いや〜渋いなぁ…
【アメリカ西部の貧困問題を先住民族問題を微妙に絡めながら、西部劇スタイルで描き出す。現代アメリカの問題を鋭く抉り出す、テイラー・シェリダンの辣腕に驚く。】
ー冒頭、寂れたテキサスの田舎町の壁に殴り書きしてある”イラクに3度行っても、見返りなし”という言葉が印象的である。-
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タナー(ベン・フォスター)とトビー(クリス・パイン)のハワード兄弟は小さな銀行ばかりを狙って、銀行強盗を繰り返す。但し、奪うのは少額紙幣のみ。スマートなやり方である。
兄弟の過去の事情も劇中、二人の台詞から分かって来る。
彼らが奪った金を信託で預ける銀行の男の言葉も辛辣に響く。
”貴方達の両親が困っている時に、金を貸さなかった銀行から金を取り立てて、家族のために信託投資をするのだから、問題はないでしょう・・。”
又、ハワード兄弟を追う、老練のレンジャー、マーカス(ジェフ・ブリッジス)と相棒アルベルトの関係の設定も絶妙である。マーカスは生粋の白人。アルベルトは先住民族の血を引いている。マーカスはそれを揶揄い気味にアルベルトに話すが、彼はきっぱりと、
”150年前、ここは私の先祖の土地だった・・。”と言い切る。笑う、マーカス。
そして、大きな銀行を襲い、人を殺めたトビーは負傷したタナーを逃がし、一人で、自警団及びレンジャーたちに立ち向かう。そして、アルベルトは死亡する・・。
トビーが、高台の意思に座って、”草原の支配者、それは俺だ・・”と、嬉しそうに叫んだ彼を、ライフルで撃ち殺すマーカスの姿。
ー草原の支配者はお前ではない・・。-
タナーが離婚した妻と息子二人に贈与した、石油が出る牧場の手伝いをしている時に、マーカスが訪れ、二人で話すシーンは今作の白眉であろう。
<見放された土地と人々の姿を鮮烈に描くテイリー・シェリダン。彼が今作を着想として、「ウインド・リバー」を制作した事が良く分かる作品でもある。>
お兄さんが良かった!!
箱庭ゲームで手配度を上げていく感覚を味わう事ができました。現代劇なのに割と簡単に盗めるので、大胆さを上手く表現していたと思います。テキサスの(警察に協力的ではない)人や土地柄、またラストも少し物足りない感じでしたが、お兄さんの荒々しい生き様が印象的でした。
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