「世界の縮図」海は燃えている イタリア最南端の小さな島 Zitaさんの映画レビュー(感想・評価)
世界の縮図
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イタリアの小さな島に一人しかいないお医者さんが、アフリカから大勢で漂着する瀕死の難民の救急救命をしている。
同じお医者さんにその島(よくわからないけど、たぶん高齢化して過疎化しているみたい、あまり若い人の姿は映らないから)で祖父母に過保護気味に育てられている小学生の男の子の心身症や弱視も診てる。
言葉の通じない難民の妊婦さんにエコーの説明をするときも、子供に病気について話すときも、穏やかで誠実でラテン人らしい明るさがある医師の態度は変わらない。
この子供と祖父母の生活描写と難民たちの救助シーンのコントラストで、環境による人間の命の重さの違いや、人が人を助けることの尊さや難しさについて考えさせられる。
瀕死の状態で大勢で海からやってくるアフリカ難民は、それこそ「藁をもすがる」力で助けを求めてくるので、手を差し伸べると一緒に海の中に引きずりこまれそうな怖さがある。おそらくこの小さな島で彼らが満足できるだけのものを提供しようとしたら、島での穏やかなイタリアの伝統的な暮らしは荒らされてしまうだろう。
だからといって、今世界中で起こっているように、住む場所を追われてたどり着いた人々を見放すことが当たり前でよいとは思えない。国を動かすような政治の話ではなくて、この島で起こっているように毎日の暮しの中に潜んでいて、善良そうな人々の無関心や保身のために他者を排除することが大勢の難民を殺し続けているということなのだから。
この映画のお医者さんのように、相手によって態度を変えることなくあらゆる立場の人に向き合っていきたい。
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