劇場公開日 2016年12月16日

  • 予告編を見る

「暗闇の住人」ドント・ブリーズ フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

暗闇の住人

2017年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

泥棒達と盲目男がかくれんぼする話

20年に一つのホラー映画と宣伝されているだけあって文句なしのホラー映画でした。

まず設定がすばらしい
荒廃したデトロイトの廃墟街、治安の悪さ、不気味さが冒頭からしっかり伝わってくる。

貧困から脱出したい若者窃盗団 対 盲目の退役軍人
ありそうでなかった組み合わせ、普通に考えたら泥棒に入られた被害者の軍人の方が主人公であるはずが逆に恐怖対象として描かれている。
目が見えないことが互いの力関係にうまく作用して、強すぎず弱すぎずギリギリの緊張感が最後まで持続していた。

盲目で強い男と言えば座頭市などを思い浮かべるが、この映画の盲目の男はそこまで強くない、筋肉質で肉弾戦はかなりのもだが、息を殺していれば回避できたり、銃の射撃制度が低いなど恐怖に負けずジッとしていれば何とかやり過ごせるのだ。

鑑賞中、息を殺す場面では見ている自分も息を飲んでしまった、それ位に引き込まれる世界だった。

家に飾ってある娘の写真が一つだけ上下逆になっている、盲人ゆえの間違いも自然だが不気味な雰囲気が出ていた。

ホラー映画でよくある「大きな音」で驚かせる演出も何度かあったが、音を消す状況のほうが多くそちらの方がドキドキハラハラ感が高かった。
よくできてると思ったのは、強さのバランスだけでなく、罪のバランス、脱出までの経路である。

罪のバランスは罪の重さではなくどちらも何かしらの罪を背負っていて悪人であるという意味。
双方とも同情しずらいし応援もしにくいので、最後までどちらが勝つかわからない。どっちが勝ってもすっきりしないが、結末が読みにくくなっている。

一軒家からの脱出に手間取るのも防犯上の理由と・・・
不自然な行動もなくしっかりした理由と遠回りせざるを得ない状況が無理なくあって良かった。

見終わって何だか既視感が有ると思っていたが、脱出ホラーゲームの名作「クロックタワー」だ。
多分「サイコ」「悪魔のいけにえ」などのホラーやサスペンス映画を参考にしているであろう作品が同じだからかも知れない。

自分の見た劇場では学生グループやカップルが多く、肝試し気分で見に来ているようだったが、軽い気持ちで見ると火傷するのでしっかり覚悟を決めて見たほうがいい。

ホラー映画好きも肝試し感覚の人も恐怖を楽しめる人は見て損はないはずです。
近年では「イット・フォローズ」「ヴィジット」などの良作ホラーが有るが一番万人向けな作品だと思います。

劇中セリフより

「神の不在を受け入れれば、人はなんでも出来る」

信じるのを辞めた時、一線を超える事ができる

信仰と共に倫理を失ってしまう、信仰によって秩序が守られている。自分はあまり信心深くはないが、何を失ったら倫理を失うのか?何が秩序を守っているのか?
気付いてないだけで、意外と危うい所にいるのかも知れない。

フリント