KUBO クボ 二本の弦の秘密のレビュー・感想・評価
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日本人が嫉妬するべきセンス・オブ・ワンダー
他のレビューに対してのレビューをするようで、趣旨に反しているとは思うが、
という前置きをしつつ
低評価される要素として、中国的なデザインがどうのこうのという意見が散見される。
でも、ほとんどの日本人がイギリス、フランス、スペイン、他ヨーロッパ諸国の歴史考証が出来ようか?
むしろ三味線の三本の糸(三味線の於いては弦とは言わず糸というのが正しい。邦題をつける時点で日本人にも日本の知識がない)を父母子に見立てるクライマックスはこれまで何百年も三味線の音を聞いてきた日本人からは出てこなかったアイデア。
さらに剣を捨て、愛を説いて宿敵に対峙する。こんなに日本的な決着をアニメーションで外国人にやられてしまっては、もう才能に嫉妬するしかない。
そもそも、ここは日本ですとは言ってない。
なんで三味線で二本弦なのか
なんでサブタイトルが二本弦なのか、三味線なら三本弦ではないのか、不思議でした。二本は、両親、最後の一本は自分自身だったんですね。剣も鎧も兜も捨て去り、思い出は強い、誰にも奪えないと弾き語り始めたクボの成長と強さが涙でした。旅の仲間も、別れが近いことが分かっている母の依り代の猿と、記憶が無くて頼りにならない父のクワガタ侍と、バラエティに富み過ぎてクボが可哀想なくらい。最後の精霊流しで行灯が鷺になっていくのが美しかったです。
不満もあるが、圧巻のストップモーションアニメ
いつの時代かよくわからないサムライ・ニッポン。
乳飲み児の頃に、母とともに、祖父のもとから命からがら逃げ出して育った少年クボ。
三味線を音色で折り紙を自在に操る能力を持ち、大道芸で糊口をしのいでいる。
そんなある日、ふたりの刺客に見つかり、母はクボを助けるために命を落としてしまう。
クボは自らの出自と親の敵を討つために旅に出る・・・
といったところから始まる物語で、なんといっても見どころは圧巻のストップモーションアニメ。
特に素晴らしいのが前半、往来での大道芸のシーン。
たくさんの観客が見守る中で、武者やもののけの姿をした折り紙が、三味線の音色とともに縦横無尽に活躍する。
見応え充分、期待度最大。
だが、物語が進むとヴォルテージは落ち着いてしまう。
クボを従い、彼を守るふたり(といっても、サルとクワガタ武者なのだが)とのやり取りが、米国的なボケ・ツッコミのテンポなので、少々こちらのリズムを壊されてしまう感じ。
また、旅の目的のひとつに三種類の武具を揃えることがあるのだが、この趣向はあまりストーリーに(特にクライマックスに)活かされていないかも。
圧巻のストップモーションアニメであるが、背景にCG処理が施されているので、全体的に画面内の密度が高く、肩が凝ってしまう。
といくつか不満もあるのだが、昂奮しながら愉しめました。
絵の力だけでなくストーリーの確かさも相まってストップモーションアニメの意義を強く感じさせる。必見と言うよりない。また"Two Strings"の意味も深い。
邦題にむりやり付け加えた「秘密」の落とし前をどうつけるのかはともかくとして、三味線なのになぜ「二本の弦」なのかは観ればわかるのだけど、個人的にはあれはまさにDNAの二重らせんを思わせる。だから母と父、そして子の三本の弦が張られる時の感動は忘れられないものになりそうだ。
字幕版で鑑賞したが、それが良かったのだろう。舞台は日本の中世をイメージしたものだがやはり自然の描写や人物の表情など東洋のそれではなく、言うなれば日系二世や三世が出ている映画作品のような印象を受けていた。であったので【ジョージ・タケイ】がクレジットで出た時は見事な配役だと思ったし、そこにはこの偉大な日系俳優へのリスペクトを感じさせてくれた。吹き替え版も観る予定だが、まず制作側の意図している雰囲気で観られたことが良かったと思える。
プレスコで制作されていることもあり、サルはシャーリーズの力強さと意外なまでの母性を落とし込み、クワガタにはマシューの収録時の身振り手振りが反映されているという。3Dプリンターを使ってあの繊細で豊かな表情を作る手法などは驚嘆すべきものだ。
物語としては早い段階で「いつものやつ」だと言うことははっきり示されるのでそこは何も問わない。これほど優れたアニメーションにひねりを加えたところで子供には意味がないし、展開としてなぜそうなるのかと言われたら「その方が絵的にも面白いものができるから」と言うことなのだろう。不思議な話ほど面白く、また心に残ると思う。
ラストで武器に頼らないというのがまた素晴らしい。ただしこれは男の子には物足りないかもしれないが。
EDで流れるレジーナ・スペクター版「While My Guitar Gently Weeps」のアレンジも素晴らしく、子守唄のようでもあった。この選曲は偉い。
一週間に3秒ほどしか撮れないストップモーションアニメ。LAIKAの次回作は何年後になるのか‥
まあまあだった
三味線で折り紙を自動的に折って、自在に操ることができる超能力の持ち主が主人公で、実の祖父に左目を奪われて、母と逃げて洞窟で暮らしているというとんでもない前提に気持ちが入らなかった。骨肉の争いが描かれるのだが、なんでそんなに命がけで戦っているのか意味が分からない。おじいさんが巨大な龍みたいなのに変身した途端、全然怖くなくなった。全体的に絵空事としか受け止めようがなかったし、名前が苗字としか思えなくて、なんで親から「久保」と呼ばれているのだろうという違和感がずっとつきまとった。
動きや表現は素晴らしかった。『コラライン』が大好きだったので残念だった。
なおさら日本語吹替版が、"是非もの"である
日本を舞台にした純アメリカ製ファンタジーアニメである。その驚くべき完成度は、子供向け・成人向け問わず、間違いなく今年ナンバーワンアニメといっても過言ではない。広い見識と経験値のあるオトナにこそ観てもらいたい、上質なアニメーション作品だ。Universal Studioは、黄色いバナナ生物の群れだけじゃなく、ちゃんとこういうのも配給できるってワケ(笑)。
主人公のクボは、魔法の三味線で、折り紙を自在にあやつる片目の少年。不吉な子どもとして一族から命を狙われており、病弱の母と2人で隠れて暮らしている。ある晩、クボは追手の叔母たちに見つかり、母親の命懸けの力で救われるが、独りぼっちになってしまう。母が最期に言い残した"3つの武具"(兜、刀、鎧)を探し出し、自分の出生のヒミツを解き明かす旅に出る。
本作は、アメリカの独立系アニメスタジオ・ライカ(Laika, LLC.)によるストップモーションアニメ作品。ライカは、「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(1993)や「ティム・バートンのコープスブライド」(2005)に参加したチームを中心に設立され、「コララインとボタンの魔女 3D」(2007)以降、アカデミー賞やゴールデングローブ賞のアニメ部門の常連である。
そして本作「KUBO」も、米国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされたほか、英国アカデミー賞では最優秀アニメ作品賞を獲得している。
言うまでもなく、その技術は世界最高峰である。ストップモーションというと、「ウォレスとグルミット」シリーズの英国アードマン・アニメーションズ(Aardman Animations, Ltd.)の粘土を使ったクレイアニメが思い浮かぶが、ライカはセットを組み、人形(またはロボット)をコマ送りで動かす。サイズが大きいものになると、もはや実写映画の現場並みである。それをコマ送りで動かすという途方もない作業だ。
ライカのCEOであり、本作で初の長編監督を務めたトラヴィス・ナイトの、本作における日本リスペクトが半端ない。
黒澤明と宮崎駿を敬愛するトラヴィスは、日本人が忘れかけたものを米国人の視点で思い出させてくれる。日本の"お盆の風景"、"灯篭流し"や”."盆踊り"、"花火"、"折り紙"の美しさ、"三味線"や"和太鼓"の音だけでなく、日本の昔話や神話のたぐいまでをエッセンスとして、本作に散りばめているのだ。"3つの武具"は、三種神器を想起させるし、KUBOが片目なのは、伊達政宗か。
全体のデザインイメージは、"浮世絵"ないしは"木版画"をイメージしていて、冒頭の高波のシーンは、葛飾北斎だろう。また骸骨のバケモノは歌川国芳が「相馬の古内裏」で描いた妖怪"がしゃどくろ"である。がしゃどくろをロボットで作るのはアニマトロニクスの手法だが、それを通常スピードでなくストップモーションにしてしまうというのは、贅沢きわまりない。
多少ネタバレになるが、"月の帝"と地上に降り立った、その娘(姫)と人間の恋愛は、"竹取物語(かぐや姫)"である。月の帝を倒して、民に平和をもたらすKUBOは、その子孫であって英雄伝的な叙事詩になっている。
"KUBO"という名前は、友人の"久保さん"から取ったようだが、ウソでもいいので"KUBOU"にしてしまえば、"公方(くぼう)"、すなわち天皇・朝廷をイメージさせ、皇室神話的にミステリアスに妄想できたりしてして・・・。
これだけ日本や日本文化、日本語に理解があるとなると、日本語吹替版のこだわりがモノ凄い。
KUBO役は矢島晶子(「クレヨンしんちゃん」の野原しんのすけ)がさすがだし、ピエール瀧、川栄李奈、小林幸子などが名を連ねる。
日本語吹替版だけ、エンドロールの主題歌で、吉田兄弟がザ・ビートルズの「While My Guitar Gently Weeps」を三味線でカバーしている。これもライカ社のオファーだそうで、吹替版も、"是非もの"である。
(2017/11/19 /ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/シネスコ/日本語吹替版翻訳:遠藤美紀)
幻想の日本が見事に花咲く
外国人の目から見た幻想でしかあり得ない日本美、日本人クリエーターが創造する以上に古の日本を感じる作品。
折り紙、三味線そして灯篭がここまで繊細なツールとして使われるイマジネーションの素晴らしさを堪能できました。
吹き替え版でしたが、矢島晶子さんの演技が見事。
美しい映像と残った謎
映像がとにかく美しかった。非常に深く日本のことを研究していて、細かいところまで当時の生活が再現されていた。また、海や森などの自然風景も、CGかと思うほど緻密で繊細に表現されており、これをストップモーションでやっているというのだから、脱帽だ。日本でないところからこんなに日本ぽいものが出てきてしまったことが少し悔しい。
敵キャラは少し気味悪く、小さい子が見たらちょっと怖いかも知れない。ティム・バートン監督作品が観られるなら、大丈夫だと思う。親子の絆を感じられる作品なので、家族で観たら、より楽しめそうだ。
「月の帝」や「双子の姉妹」などの月のひとは、竹取物語の設定がもとになっているのかな?と思った。劇中に有名な浮世絵に似たシーンもいくつかあった。日本人として、観ていて嬉しくなってしまう。
映画のチラシを見た感想としては、荒波を背景にクボが立っている絵は、うまく表現できないが、ぱっと見ると少し重く暗い内容に感じるので、個人的にはもっと明るいものにしてほしかった。そうすればもっと多くのひとに目に止めてもらえるのではと思う。
また、お母さんが「かつて犯した悲しい罪」との説明があったが、罪と言うべきではないと思った。月のひとたちにとっては罪でも、クボやお父さんにとっては、違うから。
そして重箱の隅をつつくようだが、村人たちの顔立ちと、城のデザインが多少チャイナ風だったのも気になった。ラスボスも火を吹くコケコッコーだと思っていたが違った(笑)。
全体のストーリーを考えると、色々な伏線を散りばめすぎて、それを回収しきれず終わった印象が強かった。自分でも細かいことは気にせず楽しめばよいのではとも思うが、大人になってしまったからだろうか…。いくつか気になる点が残ってしまった。
まず、「月の帝」と「双子の姉妹」たちは何故月に住むことになったのか?描写がなく、気になった。もともと、普通の人間とは異なる存在として月に住んでいたのだろうか。クボのお母さんも折り紙を操る力があったので、月のひとは皆そうなのかも知れない。月に住むと永遠の命を得られるようだが、この映画のテーマが「わびさび」ということらしいので、それと対比して表現したのだろうか。
そして、なぜ「月の帝」はクボの目がほしかったのか?クボの目に何か特別な力があるのかと思ったが、そこは最後まで明かされなかった。気になったのは、最初「月の帝」の目は両方白かったのに、最後普通の人間になったときは片目が黒かった…。それってもしかして昔クボから奪った片目…?「双子の姉妹」たちも、「月の帝」がクボの目を必要としてると言っていたし、何かに使おうとしていたのでは?…気になる。
それから、お父さんお母さんの最期があまりにもあっけなかった。家族感動の再会シーン直後だったので、せめてもうちょっと引き延ばしてほしかった…。
「双子の姉妹」たちが過去にお父さんを殺さなかったのは何故だったのだろう。本当は既に死んでいて、クワガタはお母さんが猿と同時に生み出した幻だったのかと思ったが、「双子の姉妹」たちがいきさつを丁寧に説明していたので違うようだ。
クワガタのとんちんかんな言動は、月のひとの妖術が原因なのだろうか。お母さんも、最初の荒波シーンで月のひとから攻撃を受けてから、記憶が途切れて頭がおかしくなってしまっていた。月のひとにはそういう能力があると思われる。
最後に、クボは三種の神器みたいなものを集めるようお母さんに言われて、死に物狂いでそれらを集めたけど、結局最後には全部脱いで、三味線だけで「月の帝」に対抗した。何のために集めたんだ…。別に集めないで最初から三味線ジャーンすればよかったのでは。何か特別な状況でないと使えない技だったのだろうか。
色々気になるので、もう一回観たい。しかし、こうして気になりまくってしまうのも、没入して観入ってしまっていたからこそ。DVDにメイキング映像がついているなら、それも観たい。
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