「地球まるごと再起動、CGゴジラ三部作開戦!」GODZILLA 怪獣惑星 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
地球まるごと再起動、CGゴジラ三部作開戦!
日本特撮を代表する大怪獣ゴジラを長編CGアニメ映画、
しかも三部作で描くというプロジェクトの第1弾。
劇場鑑賞はしていたものの、これまでレビューを書いていなかった。
せっかく最終作も公開されたことだし、3作まとめてレビューします。
監督は『シドニアの騎士』『亜人』の静野孔文&瀬下寛之、
脚本は『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄
……とは書いてみたが、アニメに疎い自分はどの作品も未見。
ゴジラファンのはしくれとして気になっていた作品ではあるが、
CGアニメしかもSF設定という従来と全く異なるアプローチ。
「従来とは多少別物でも面白けりゃ良いか」くらいに割り切って鑑賞。
...
しかし、意外やと言うのも妙だが、ゴジラの設定自体は
原作をかなりリスペクトしたものになっていたと思う。
まずゴジラの能力スペックは歴代最強級と言って良い。
強力な熱線にくわえ、物理攻撃すら無効にする電磁バリアを常時展開。
さらに2万年成長し続けた“ゴジラ・アース”は、その圧倒的体躯も
さることながら、尻尾をひと薙ぎするだけで
四方数キロを
破壊し尽くす絶望的なまでのパワーを見せつける。
この“ゴジラ・アース”の面構えも、単なる化物では無く、
東洋の龍のような老練さと神秘性が漂う風貌が気に入った。
「環境破壊が起因で出現」「植物に似た性質」「2万年死滅せず成長」
などの特徴も含めると、今回のゴジラが地球生命に根付いた一種の神、
人類にとっての破壊神、地球にとっての守護神という印象を受ける。
また、アニメでやる以上、期待するのはアニメでしか不可能な表現。
“ゴジラ・アース”の300m超という破格のスケールの表現や、
生身の人間が小型戦闘機でゴジラに接近して戦う等の
シーンは、やはりアニメでしか表現できないだろう。
歴代シリーズの特徴を尊重しつつ、アニメでしか表現
不可能なゴジラ映画を造り上げようとしている点は嬉しい限り。
...
しかしながら……
『怪獣惑星』というタイトルを聞いて連想したのはゴジラ以外の
怪獣の出現だが、黒い翼竜くらいしか登場しないのは拍子抜け。
「ゴジラに生態を寄せることで環境に適応した」と設定がある以上は
外形や色合いに多くのバリエーションは望めないが、画ヅラは寂しい。
だが最大の不満点はキャラクター描写の不足だ。
いや、主人公ハルオについては、ゴジラを憎む動機は描けていたと感じる。
まず「幼少時に両親を殺された」だけで動機を終わらせていない点がいい。
資源の枯渇によって人類は疲弊し、口減らしの為に弱者が追放されている。
ハルオは、親のみならず人類の人間性すらゴジラに奪われたと憎悪している。
問題は他のキャラクターだ。
数が多い上に、思想の違いにもとづく関係性が複雑すぎる。
異星人2種族・エクシフとビルサルドは外見が地球人と
あまり変わらないし顔が似ているしでゴチャゴチャするし、
特にビルサルドは「わざわざ異星人として出す必要が
あったのか」と首を傾げる程度の描き分けに留まっている。
個より全体、自然よりテクノロジーを重んじるビルサルドは、
地球の過激派の軍人とかでも代用が利きそうに思えるんである。
(まあ20世紀末には無いナノテクや人類を地球から脱出させる
技術を与えるという物語上の割振りもあったのかもだが)
他のキャラもメトフィエスとマーティン以外は薄味な印象。
例えば、ハルオと対立していながら最後に
囮として死ぬリーランドというキャラがいたが、
彼の背景やハルオとの関係の描き方が中途半端で、
英雄的な最後も唐突な心変わりのように感じた。
...
120分ならまだしも90分というタイトな上映時間で、
地球奪還までの背景・ゴジラとの対決・2万年後の地球を
描きつつ、各キャラの関係性や思想の違いも描くというのは
厳しかったかとは思うが、各キャラへの理解が深まらないと
感情移入もしづらいし、エモーショナルにもなりづらい。
しかし、ハードな終末SF設定やハルオのキャラ、そして最後の
ゴジラの圧倒的存在感で、次回作を観たいと思わせる
出来だったかな。3.25判定くらいでの観て損ナシ。
<2017/11/25鑑賞>