手紙は憶えているのレビュー・感想・評価
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魅力的なドラマの間に「記憶」の重みを巧みに挟み込む
おじいちゃんと拳銃。それは映画人なら一度は描いてみたいとビジュアルであろう。本作はアウシュヴィッツの生存者が復讐の相手を探し求めるというプロットをロードムービーへと展開させる。そこで鍵となるのが「記憶」。認知症に冒された彼がリマインダーとして手首に「手紙を読め」と記すのは非常に賢いやり方だが、同時に悲しい皮肉でもある。なぜなら、すぐ同じ腕には囚人番号が焼き付いているのだから。忘れたくても忘れられない記憶があり、忘れたくないのに忘れる記憶もある。そして本作は結末にて、記憶のさらにもう一つの側面を伝えてくれるのだが、ここでは書くまい。ミステリーとしても十分に面白いが、「サウンド・オブ・ミュージック」でナチスの手より逃れていくトラップ大佐役のプラマーが主演するなどキャスティングも秀逸。「スウィート・ヒアアフター」や「アララトの聖母」のアドム・エゴヤンが「記憶」を語るとまた特殊な響きを持つのは言うまでもない。
エゴやん版「ゆきゆきて神軍」
アトム・エゴヤン監督が描くナチスハンターの復讐劇、なのだが、このハンターが90歳の老人で、アルツハイマーで記憶すら定かでないというのがポイント。クリストファー・プラマー扮するアウシュビッツの生き残りは、家族を殺した収容所の責任者が名前を変えて潜伏していると知り、老人ホームを抜け出して探索の旅に出るのだ。
なにぶんご高齢なので復讐者である本人がなにかとおぼつかないのが本作の面白さ。あまりにも危なっかしい素人暗殺者の道行きに「おじいちゃん、がんばれ」と声援を送りたくなる。狙う仇には候補者が四人いるのだが、これまた同じくらいご高齢なわけで、盲執に憑かれた老人が寝たきりの老人を襲撃する姿は原一男の「ゆきゆきて神軍」がダブった。
ネタバレを避けたいのでオチの話はできないが、この映画のキモはオチよりも過程にあると思う。どのシーンもブラックなコントとしてみごとに機能していて、同時にスリリングでこわい。テーマはシリアスでヘビーだが、とにかくべらぼうに面白いスリラーとして楽しんだ。
【認知症気味の老人が、アウシュビッツの悲劇を清算するために行った事。ラストのどんでん返しには刮目する作品である。】
■妻の死も忘れるほど物忘れが進んだ老人・ゼヴ(クリストファー・プラマー)。
ある日、彼は友人のマックス(マーティン・ランドー)から手紙を託される。
ゼヴとマックスはアウシュヴィッツ収容所の生存者で、家族をナチス兵に殺されていた。今も生存しているというその兵士に復讐すべく、ゼヴは一人で旅立つ。
◆感想
・認知症をテーマとした映画は、近年盛んに公開されているが、今作の認知症を患った男と
元アウシュヴィッツ収容所の生存者であったゼヴとルディ・コランダーを演じた独逸の名優ブルーノ・ガンツが交わすラストシーンは余りに切ない。
<戦争犯罪を扱った映画はあれど、そこに認知症を組み込んだ映画の作風には、哀しくも唸らされた作品である。
今や、クリストファー・プラマーも、ブルーノ・ガンツも故人になってしまったが、今作を支えているのは、お二人の抑制した演技である。
戦争は、人類にとって何ら豊かさを齎すものではなく、哀しき想いを残すだけである事を描いた映画である。>
☆☆☆☆ 日本題名の『手紙は憶えている』は、分かり易さでは間違いで...
☆☆☆☆
日本題名の『手紙は憶えている』は、分かり易さでは間違いでは無いんですが。映画を観終えると「ちょっと違うかな?」…と。
原題は【remember】なんですが。これが映画を観終わって、帰宅途中で色々と考えていると、ジワジワと効いて来る題名なんですよね〜(´-`).。oO
早い話が、これは殺し屋のロードムービーなんですが。主人公の殺し屋は、クリストファー・プラマー演じる90歳のボケ老人。
だから手足は覚束ず、記憶も直ぐに無くなってしまう。
まさに、こんな殺し屋は前代未聞なのであります。
他にも、ネオナチ男が態度か急変する辺り。
…まあ、これ以上はネタバレになってしまうので止めておきましょう。
最後のオチがすこし強引な面は有るものの、確実に入場料を損する事は無いと思いますね。
※ ネットでネタバレされる前に、是非お早目に劇場へ行かれると宜しくか…と。
兎に角、日常に潜む暴力が怖い。
多少ネタバレしても大丈夫かな?ってところで言えば。先ず街中で普通に拳銃が買えてしまい。店員が…
「ちょっと値は張るけど(殺傷能力が高いから)確実に殺せるよ!」
…と言ったり。
警備員が拳銃を見て…
「俺が最初に持っていた奴だ!」
…だもの、、、
これ、年間のベスト10に入って然るべきだと思いましたね。
いや〜!ゾクゾクしたわ〜( ;´Д`A
2016年11月3日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ/スクリーン2
※ 最近話題の、某◯カ◯ミ◯賞ノミネート作品が似ているとの情報が有ったのですが、、、真意は未見なので分かりません。
驚きのクライマックス
話は面白い
見た事のないタイプの映画。監督の才能を感じる。
アウシュヴィッツものだけどそこまで重くない
アウシュビッツ関連映画の中でトップクラスの出来ではないか?
どうにもならない昔の過ち
オトシマエ
おじいちゃんの魅力を堪能する
見事!
正直あまり期待は大きくありませんでしたが、かなり面白くて、お気に入りの一作になりました。
予告でラスト5分とある通り、本当に騙される衝撃的なラスト5分です。
完全に観る前とは世界が一転します。
家族をアウシュビッツで殺された2人のおじいさんの復讐劇。
観終わってからよくよく考えるとおじいさん相当頭いいなと。
また、認知症が鍵になっており、ある意味認知症エンターテインメントといった感じです。
手紙だけが憶えている。
だけど…
主演のクリストファー・プラマーさんの名演技が素晴らしかった。
全体的に緊迫感のある映画ですが、ゼブのおどおどした感じが危なっかしさを助長して、ドキドキさせられました。
2人目のルディ・コランダーとのシーンとゼブのピアノ、それから純粋で可愛い子供たちが唯一の救い。
やはり、戦争は絶対良くない。
未だにユダヤ人をあそこまで軽蔑する人がいるのか?
いるなら、意外。
まだまだ知らないことが多そうです。
さすが、エゴヤン監督作品。一筋縄ではいかない。
人の心の奥底に潜む、無意識に自分自身すらをだましてしまう、自己防衛・自己都合が、引きずり出され、醸し出される。
犯人探しサスペンスと、おじいちゃんが遂行できるのかとで、ハラハラしながら見る初見。
けれど、結末を知ったうえで再見すると、それぞれの映像・演技・音楽に仕掛けられたメッセージに唸り込んでしまう。
子どもにウィットに満ちた言葉がけができる人。あそこで泣ける人。人柄を表すというインテリア・エクステリア。あのような家族に囲まれる人。
そんな人たちの過去。もし、時代が違っていたら、共に生きる人が違っていたら…。
”ナチ””ドイツ人”と一言で説明しても、様々な立場・信条。
『アドルフに告ぐ』にも通じるテーマ。
自分が自分であるという”記憶”。そして周りが認定する”自分と言う人”と”記憶”。
事実と”記憶”。周りの人・状況の中での”記憶”。
いとも簡単にゆがめられるもの。『デビルズノット』でも、『スウィートヒアアフター』でも、このテーマを違う形で描いている。
それでいて、エピソード記憶や時が混乱しても、体が、耳が覚えている記憶。
たんに、”認知症”の症状というだけでは説明できない。解離・思い込み…。様々な記憶。
ナチの脅威が過去のものではないことも恐ろしい。
ナチグッズが、オークションで高額で落札≒たくさんのナチオタ・信奉者の存在。
銃社会USA。日本では高齢者ドライバーが問題になっているが、銃なんてその比ではないだろうに…。
ラスト。
自分が自分であることの崩壊。こうありたいと生きて来た自分と、過去。
それがあぶりだされた時、人はそこに何を見、何を行うのか。
極限のテーマ。
誰が良い人で、悪人なのか。そんな単純ではない。
人間の業というものを、またつきつけられてしまった。
名優ありきの…って、この繊細かつ奥深さ・味わい深さ、それでいてのおかしみ、ほっこりと緊張のバランスは、彼らでなくては出せない。
観る価値がある。
面白かった
名優あればこそ
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