劇場公開日 2016年10月28日

  • 予告編を見る

「認知症の老人が戦犯を探す映画なんて…」手紙は憶えている うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0認知症の老人が戦犯を探す映画なんて…

2025年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

思いのほか評価の低い映画だと思う。

そこで、どういう点がマイナスポイントなのか考えてみた。
先に言っておくが、私はこの映画本当によくできていると思う。
自分の評価の基準は
☆☆☆…いい映画
☆☆☆☆…人に勧めたくなるほどいい映画
☆☆☆☆☆…購入してでも何度でも見たい映画
だいたいこんな感じです。

さて、そこでこの映画、私は最近見た作品の中ではかなりのお気に入りだが、現在3.94ポイントで残念ながら星4つを超えていない。
その理由は、レビューで見る限り
・いくら認知症でも、そんな大事なことを忘れるはずがない。
・つじつまが合わない。話に無理がある。
・老人ばっかり出てきて、華がない。
・テンポがゆったりしすぎで、退屈。
・復讐劇なのにいっこうにうまくいかない。くだらないつまずきが多い。

こんなところでしょうか。
で、私の感想ですが、最近の映画ほど、評価は低く、昔の名画ほど、評価が高くなる傾向があるようです。
この映画はPG12指定になっていますが、復讐を肯定しているともとれるストーリーや、実際に銃を使って犯罪が起こる点などには、親の注釈が必要ということでしょう。それどころか、親子で揃ってぜひ見て欲しいということかもしれません。

とにかく、携帯電話や、ネットなどの小道具に頼らず、「手紙」という手段で認知症の老人が記憶を取り戻しながら旅をするシンプルなストーリーは実に見ごたえのある人間ドラマで、クリストファー・プラマーが見事なピアノの腕前を披露するシーンは白眉です。

ドイツ語まじりのセリフ。認知症をナチュラルに演じきる。俳優としてのスキルは高いレベルが要求され、共演者とは基本1対1に対峙する演技がほとんどですが、ラストですべてが絡み合う見事な幕引きは、出演者すべての奏でる協奏曲のようです。

メンデルスゾーンとワグナーの対比だったり、意識のレベルが低いことを濁った鏡で表現したりする、映像も見事。無駄をそぎ落とした脚本の出来栄えも素晴らしい。そして圧巻のラストと、映画に必要な要素がいくつも揃っています。

上にあげたマイナスポイントが気にならない人は、ぜひ見て欲しい。
きっと、誰かに話したくなる映画ですよ。

うそつきかもめ
PR U-NEXTで本編を観る