劇場公開日 2017年10月27日

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「重みが桁違い」ブレードランナー 2049 Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 重みが桁違い

2018年1月9日
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鑑賞方法:映画館

ドゥニ・ビルヌーブ監督は凄いことをやってのけたと思う。前作で描かれた「人間とレプリカントの違い」や、「レプリカントを愛せるのか」などのテーマをより深め、壮大になっている。第一作はこんなに重いテーマだっただろうか。確かに前作の世界観とテーマは歴史に残しても良い位のものだったが、加えて本作は感情を奮い立たせるような、自身が体験したことのない思いが込み上げてくるほどの作品になっている。劇場に数回足を運び、その度に胸が一杯になり、それは今もなお体に染み込んでいる。

まず本作では、主人公「K」がレプリカントである。最後に分かる衝撃の事実などではなく、冒頭から明かされることだ。レプリカントの狂暴性を描いた前作とは偉い違いだ。ライアン・ゴズリングがどこか寂しげな眼差しで人目を避ける様に歩く姿には何とも言えぬ哀愁が漂う。それにアナ・デ・アルマス演じる「Joi」の真っ直ぐな愛情が何ともミスマッチで、孤独な1人の"男"として全体に重く暗い空気を醸し出しているのである。ファンはどうしても前作では語られる事の無かった、「デッカートはレプリカントなのか」の答えが気になるところなので、この設定で新たに考えさせられる事になった。
そして、その他の登場人物にもレプリカントが複数名いるが、勿論反乱を起こした旧型の"ネクサス8型"ではない、ウォレス社による改良版ではあるものの、世間に浸透していればレプリカントの在り方も変わっていそうだが、変わったのは表面的な部分だけであり、心に巣食う差別意識などは何も変わっていない。実際にレプリカントは描写こそ無いものの、地球外の惑星の植民地化に多く駆り出され、地球では身体を売る女性型レプリだったりなど、"汚れ仕事"はいつでも彼らである。それでも彼らの中で受け継がれる「愛」があることにとても胸を打たれる展開になるのだが、人間よりも人間らしい描写が多く、中々の感情移入で後半まで没入し、169分があっという間に過ぎていた。俳優陣の演技に引き込まれるのはもちろん、ハンス・ジマーの劇中音楽も凄まじい。「インターステラー」や、「トランスフォーマー 最後の騎士王」でも思ったが、ハンス・ジマーの音楽は場面を盛り上げ、感情に大波のような影響を及ぼすレベルである。

何度観ても頷ける、手に力が入る作品にはそうそう出会えない。オリジナル第1作と同じく興行的には芳しくなかった印象だが、本作も十数年経ってから名画の様な扱い方をされるのだろうか。

Mina
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