「前作で足りなかったドラマの要素を強くしたことは評価できる。」ブレードランナー 2049 ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
前作で足りなかったドラマの要素を強くしたことは評価できる。
やはりこの作家は真面目な気質でとても丁寧に作品世界を作り上げるので、そういう人でなければこの物語の終結は成立しなかったのではないか。
ともあれこうしてSFでハードボイルドな作品を見られることに感謝したい。作家の気質が反映された生真面目な主人公Kに寄り添えるかどうかが境界線になりそうな構成になっていて、それは前作とは全く違うアプローチだ。その時点でKの存在が特別でないことが既に示されているようでもあるが、実際のところデッカードが特別であることには違和感がある。あんなクズが‥ということなんだけど、それはタイレルのきまぐれだったのだろう笑。レイチェルが特別なのは間違いないが。あのシーンはまがい物とはいえ本人が演技に関わっているということで泣けるシーンだった。
Kの造形やジョイといったAIの描かれ方のことなど触れたいことはいくつもあるが、今作を見てふと思ったのが「オフワールドとは?」ということである。ラブがデッカードを連れてオフワールド行きのターミナルへ向かう道中は管理されていた壁の外で暗い海が広がり、絶えず雨が降っているようだ。暗い海というのは映画的なルックなのだけど、この作品世界で喧伝されている理想郷に向かうには違和感がある。ここで思ったことは「オフワールドは本当に理想郷なのか」ということ。レプリカントはそこで過酷な労働をさせられ、ロイはその中でオリオン座の近くで炎を上げる戦闘艦や暗黒に沈むタンホイザー・ゲートのそばで瞬くCビームを見たらしいが。何しろ彼らは4年の寿命しかなかったので、なかなかの過密労働だなと。アドリブのセリフとして映画史に残る素晴らしさなのでこのことは前作ですでに思っていたことだが封印していた。
しかし今回オフワールドへの道程の一端を見せられたことでその疑問がふくらんでしまった。