「切なさの応酬に涙が止まらない」ブレードランナー 2049 yookieさんの映画レビュー(感想・評価)
切なさの応酬に涙が止まらない
丸の内ピカデリーでの爆音映画祭にて、ファイナルカットを予習してから鑑賞しました。
先ず何よりも、ドゥニ・ビルヌーブ監督に賞賛の拍手を送りたいと思いました。これだけカルト的人気のあるブレード・ランナーの続編を、35年振りに、もはや新たな未来像なんて提示することは出来ないだろうと思われる現在において、世間の期待値というか注目も、スターウォーズよりもっとコアなファン達が恐る恐る期待と辞めとけばいいのに…というような気持ちを抱いていただろう中で、出来得る限り最高の仕事をしたんじゃないかと思います。「メッセージ」で見せつけた独特の美しい世界観は、ブレランの続編に相応しく、やはりこの人にしか監督出来なかったんじゃないかと。
メッセージ同様に、というより前作同様とも言える、どちらかといえば、しみじみと進むストーリーに、眠くなってしまった…という感想も聞きますが、私はどっぷり浸って観ることが出来ました。とにかく、切なさに溢れた映画でした。Kの最後にはもう涙が止まりませんでした。
自分はもしかしたら特別な存在なんじゃないか…その思いに奮い立たされたり打ちひしがれたりしながら生きているレプリカントが、本当に涙ぐましくて。ラブちゃんは敵だけど、彼女もまたウォレスにとって特別であると信じる気持ちだけで、真っ直ぐであり、常に涙を流しながら人を殺していく…。殺人は残酷な行為だけど、ウォレスに対する想いというか忠誠心のようなものは、共感性ではないのだろうか…?と思ったり。
Kの、世間における不遇、本当かもしれない"記憶"を辿った結末も悲しかったけれど、AIのジョイとの生活、旅と、突然すぎる別れは、これでもかってくらい可哀想すぎました。そして、最愛のジョイを失った後に街中で出会うジョイの広告が、彼女が"生きて"いた時と同じ"how was the day?"という言葉を発する事で、ジョイが注いでくれた"愛情"も、決して自分だけに対する特別な感情ではなく、ただのプログラムだったのか…植え付けられた記憶と何ら変わりないのではないかと、また切なさが襲う。それでも、他者の為に、何か人間らしいというか、意義のある事をして人生…レプリカント生を全うしようとするKの行動に心を打たれるし、前作以上に、共感性とは何なのか、人間性とは何なのかという事を問いかけてくるのです。
Kの行動を促した一つの切っ掛けになっただろう、デッカードがレイチェルの為に、愛し合っていたけど離れ離れになったと言うエピソードにも泣けました…。
最後にKが、降り頻る雪を見つめる表情に、喜びなのか、悲しみなのか、何とも言えない美しさを感じて…
思い出してまた泣きそうですが。言葉では上手く表せない感情と感動が押し寄せました。
ライアン・ゴズリングがこんな切ない役を演じれるとは思ってませんでした。すごかった…。
本当に素晴らしい作品に出会えて良かったです。絶対に今年観るべき映画の一つです。前作を観てから鑑賞するのがお勧めです。
ありがとうドゥニ・ビルヌーブ!
ありがとうリドリー・スコット!
(11/2 IMAX3D再鑑賞)