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五日物語 3つの王国と3人の女 : 特集

2016年11月14日更新

「世界最初のおとぎ話の映画化」──その中身は、イメージと全く違った! 
淫びで、残酷で、過激。だが美しいダーク・ファンタジーだった!

カンヌ国際映画際で2度もグランプリに輝いた鬼才が、唯一無二の映像世界を作り上げた
カンヌ国際映画際で2度もグランプリに輝いた鬼才が、唯一無二の映像世界を作り上げた

400年前にイタリアで書かれた「世界最初のおとぎ話」を原作に、イタリアの鬼才マッテオ・ガローネ監督が描く濃厚なダーク・ファンタジー「五日物語 3つの王国と3人の女」が、11月25日に公開を迎える。サルマ・ハエック、バンサン・カッセル、トビー・ジョーンズ、ジョン・C・ライリー共演、3人の女性たちの数奇な運命を描く衝撃作の見どころとは?


カンヌで2度の栄誉に輝いた鬼才が描く“うわさの作品”を見てきた── 
壮麗な映像と、バイオレンスとエロスに満ちた濃密作の中身は、“予想の斜め上”だった

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カンヌ国際映画祭で2度のグランプリに輝いた鬼才が描く、残酷で美しいダーク・ファンタジー。17世紀に記されたおとぎ話を原作に、圧倒的な映像美でつづられる「うわさの作品」をひと足早く鑑賞してきた映画.com。そこには、予想の斜め上を行く大きな驚きが満ちていた。

画家フランシスコ・デ・ゴヤの絵画に影響を受けたという映像は美しくも不気味さが漂う
画家フランシスコ・デ・ゴヤの絵画に影響を受けたという映像は美しくも不気味さが漂う

「五日物語」というタイトルと、美しい女性たちが彩る荘厳なポスタービジュアル、そしてカンヌ国際映画祭出品作ということから、「高尚な文芸作」というイメージを(勝手に)持っていた。だが、それは大きな間違いだった。ドラゴンのようなモンスターが存在し、巨大なコウモリが人間を襲う世界が舞台。魔法使いによる魔力が作用するファンタジー空間での出来事が描かれていたのだ。だが、決してファミリー向けではない。娯楽性たっぷりに、濃密なバイオレンスとエロスが描かれる。まさに「大人しか堪能できない」濃厚で過激な作品だったのだ。

「フリーダ」でオスカー候補になったサルマ・ハエックほか女優陣の鬼気迫る演技は出色
「フリーダ」でオスカー候補になったサルマ・ハエックほか女優陣の鬼気迫る演技は出色

中世風の世界を舞台にしているのに、時代性をあまり感じないままグイグイと引き込まれていく。本作の物語が古めかしく見えないのは、描かれるのが現代社会にも通じるテーマに他ならないからだ。「母となる事への執着」「大人の世界への憧れ」「若さと美への渇望」──原作は400年前にイタリアで書かれた世界最初のおとぎ話「ペンタメローネ 五日物語」だが、それほど「人間の欲望」とは普遍的で、そんなにも長い間解消されていなかったのか!?と驚かされる。ヒロイン3人の運命から目が離せなくなってしまった。

美醜が混然一体となった退廃的な世界観は、ダークな“おとぎ話”へと見る者をいざなう
美醜が混然一体となった退廃的な世界観は、ダークな“おとぎ話”へと見る者をいざなう

重厚であり美麗な美しい映像にも心が囚われてしまった。元画家ならではの独創的な美的感覚でメガホンを取ったのは、「ゴモラ」「リアリティー」で2度のカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞したマッテオ・ガローネ監督。イタリアを縦断して行われたという各地でのロケ撮影の映像が、大きな見どころとなっているのは間違いない。その中には、世界遺産であるアンドリアのデルモンテ城も含まれており、知られざる数々の名所とあわせて、幻想的なイタリアの原風景を映し出すことに成功していると感じた。

古城をはじめとする大パノラマで切り取られた歴史的建造物の数々は、息をのむ美しさだ
古城をはじめとする大パノラマで切り取られた歴史的建造物の数々は、息をのむ美しさだ
好色な権力者やある生き物に異常に執着する父など、ベテラン勢がアクの強い人物に挑戦
好色な権力者やある生き物に異常に執着する父など、ベテラン勢がアクの強い人物に挑戦

出演者たちの迫真の演技力によって、現実ではないファンタジー世界に高いリアリティを感じられるとも強く思った。劇中では3つの王国が登場するが、それぞれの国の王や女王役として、実力派俳優が顔をそろえているのだ。子どもを欲する女王役には、「フリーダ」でアカデミー賞主演女優賞ノミネートのサルマ・ハエック、その夫である王役には「シカゴ」でアカデミー賞助演男優賞ノミネートのジョン・C・ライリーが並ぶ。セザール賞俳優のバンサン・カッセル、「裏切りのサーカス」の個性派トビー・ジョーンズも、それぞれ王を演じているのだ。


「3人の女」が抱く「女の欲望」が描かれる「女性のための物語」 
果たしてあなたは、どの女の運命から目が離せなくなるのか?

過酷な運命に翻ろうされるなかで、女性たちの内にひそむ本性が浮き彫りになっていく
過酷な運命に翻ろうされるなかで、女性たちの内にひそむ本性が浮き彫りになっていく

本作で描かれる世界に存在する、3つの王国。そこでは、女王、老婆、王女という3世代にわたる3人の女がそれぞれに悩みを抱えて暮らしていた。彼女たちの悩み──それは、現代に生きる女性にも通じる普遍的かつ貪欲な「女の欲望」だ。ある願いに執着する恐ろしい女たちが描かれる一方で、登場する男たちは全て「ダメ男」なのが面白い。3編の物語の中心となる女たちが欲望をかなえたとき、信じられないような運命が目の前に現れる。観客は、どの女から目が離せなくなってしまうのか。

子宝に恵まれるためには一切の手段を選ばない“純粋な狂気”を宿した危険すぎる人物
子宝に恵まれるためには一切の手段を選ばない“純粋な狂気”を宿した危険すぎる人物

ロングトレリス国に暮らすのは、妙齢の女王。美しい容姿とぜいたくな暮らし。王の愛を一身に浴びる彼女だったが、唯一、母になりたくても子を授かれないという不妊の悩みを抱えていた。ある夜彼女は、怪しげな魔法使いと出会い、「怪物の心臓を食べれば、懐妊できる」というお告げを聞く。王はその願いを実現するべく怪物に挑むが、刺し違えてあっさりと命を落としてしまう。まるで子宝を残すための道具のように。女王は心臓をむさぼり、念願の息子を出産するが……。

若さと美貌に取り付かれた老婆が、後先考えない行動に出るさまには痛々しさすら伴う
若さと美貌に取り付かれた老婆が、後先考えない行動に出るさまには痛々しさすら伴う

ストロングクリフ国では、醜い容姿のために、人目を忍んで暮らしている老婆の姉妹がいた。薄暗くなってから起き出し、染め物の仕事を始める彼女たちだったが、姉は夜ごと口ずさむ歌で、美しい声を響かせていた。その容姿とは裏腹の美声に魅せられてしまったのが、女性との交わりにしか興味がないストロングクリフ国のごう慢な王。毎晩のように訪れてはドア越しに求婚する王の気持ちに応えたい姉は、不思議な力で若さと美貌を手に入れる。だが、それは「妹を捨てる」ことを意味していた。

夢見る王女が、ごう慢な父親の軽率な行動のせいで地獄のような生活に突き落とされる
夢見る王女が、ごう慢な父親の軽率な行動のせいで地獄のような生活に突き落とされる

ハイヒルズ国にいるのは、まだ見ぬ大人の世界に強い憧れを持つ王女だ。「早く城の外に出たい」と切望する彼女だが、父である王は「まだまだ子どもだから」と彼女のことには無関心。我が子の思いよりも、ペットにした「ノミ」の育成に夢中になっているという体たらくだ。そんな折、王が「問題に答えられた者を王女の結婚相手にする」というお触れを出す。絶対に答えが分からない難題だったはずが、正解した者が現れる。それは、岩山に暮らす屈強な化け物のような男だった……。


「パンズ・ラビリンス」「スリーピー・ホロウ」「東京喰種」「鋼の錬金術師」etc. 
 ダーク・ファンタジーに心ひかれる全ての者に本作を強くすすめる!

単純なハッピーエンドではない、苦味とシニカルな目線をまぶした大人の幻想譚(たん)
単純なハッピーエンドではない、苦味とシニカルな目線をまぶした大人の幻想譚(たん)

ダークで異様なエネルギーを放ちつつ、見る者の心を捕えて離さない「ダーク・ファンタジー」。映画、ドラマ、コミック、アニメと、これまでにも数々の傑作が登場してきたが、「五日物語 3つの王国と3人の女」は、そんな目の肥えたファンに強くすすめたい注目の作品なのだ。

「ゴモラ」(08)、「リアリティー」(12)で、2度のカンヌ国際映画祭グランプリに輝いたイタリアの鬼才マッテオ・ガローネが、17世紀にイタリアで書かれた民話集「ペンタメローネ 五日物語」から3つの異なる物語を選り抜き、1編の物語として再構成した濃密なファンタジー。美しくもまがまがしい中世を思わせる世界を舞台に、エロスとバイオレンスから目をそらせることなく、残酷なまでの「女の性(さが)」に肉迫。3つの王国に住む3世代の女性たちが、「母となること」「若さと美貌」「大人の世界への憧れ」というそれぞれの願いをかなえた結果、恐るべき運命に飲み込まれていくさまが描き出される。おとぎ話が原作といえど、子ども向けの甘さなど全くなし。ダーク・ファンタジーに目がないファンに強くすすめたい、本気の一作だ。

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