「昔々あるところに美しいお妃様がいました。ところが」五日物語 3つの王国と3人の女 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
昔々あるところに美しいお妃様がいました。ところが
彼女は優しい夫である王様に塩対応、子どもができないことに悩み常にイライラ。王様の命と引き換えに得た物を食べたらすぐに妊娠し王子が産まれました。当然溺愛。その物を調理した処女の料理女も同時に妊娠し男の子を出産し長じて二人の男の子は仲良くなりますが、女王は気に入りません。化け物牝鹿の姿になって仲良い二人の少年を追いかける王妃は息子に殺されました。
次はノミ好きの王様のお話。お城はなんと!カステル・デル・モンテ!不思議で美しい八角形のお城!ノミでなく天文学とか数学とか外国語に堪能な、そのお城を本当に造らせたフェデリコⅡ世のようだったらよかったのに。早く結婚し城から出て大人になりたい娘の王女は、愚かな父ゆえに化け物を夫にせざるを得ませんでした。苦難を経て自分の力で化け物を殺し全身血だらけで父に見せつけました。白馬に乗った王子様という夢物語は未熟で愚かな妄想だと身を持って理解した王女は、夫どころか父も不要なことがわかり自身が女王になったのでした。
そして最後は二人の老婆姉妹の話。歌声が美しい故に女好きの王様に迫られる姉・老婆。姿見せずにどうにかうまく行ったがばれてしまい森にほっぽりだされました。そこに現れたのが魔女。彼女の力で、皺だらけ白髪混じりでボサボサ髪の老女はあっという間に、スタイルも顔も肌も髪も美しい若い女になっていました。女好きの王様が放っておくわけもなくご結婚!でも化けの皮が剥がれるのも時間の問題。若返りの理由を知ろうともしないお馬鹿な姉は、妹・老婆に適当に残酷なことを言って妹は全身血だらけになりました。
と、どの物語にも共通して一旦は結婚するも色んな理由で王様も女王もパートナーがいません!なんてアクチュアルなんでしょう!
このお話『ペンタメロン』(五日物語)の構成は『デカメロン』(十日物語)から、そして中身はナポリ方言で書かれた50のお話から成る子どものための童話集で、グリム童話最終版の200年も前に作られたんだそうです。グリム童話初版よりもずっと残酷で血みどろ。女は強くよく喋りセックス関連も開けっぴろげ!教訓なんてない!あるとしたら;何事も過剰に追求するのはやめましょう、自分の頭で考えましょう、魔法や権力者に頼るのはやめましょう!それとも、フィレンツェ野郎は話を作るのに10日もかけたがナポリの人間は5日で作りあげたのだ!勝った!という自慢かもしれません。
子どもの頃、話に夢中になってページをめくるのがもどかしいような、めくりたくないような気持ちになってワクワクと本を読んだ自分を思い出しました。アルバ・ロルヴァケルも出演していた!監督はマッテオ・ガットーネ!衣装、色彩、音楽、自然、庭、お城の外と中;すべての美しさに夢うつつでした。楽しく笑えて先が知りたい気持ちで一杯、至福の134分でした。